中東かわら版

№92 UAE:タフヌーン・ビン・ザーイド国家安全保障局顧問のイラン訪問

 2021年12月6日、UAEのタフヌーン・ビン・ザーイド国家安全保障局顧問がイランを訪問し、テヘランで同国のライーシー大統領及びシャムハー二―国家安全保障局評議会事務局長と会談した。会談では、二国間関係についての展望、最新の地域・国際情勢、また共通の関心事項について協議したと報じられた。

 

評価 

 2021年を通して、UAEは周辺国との緊張・対立の緩和を進めてきた。具体的には、カタルとの国交回復(2017年以来)、トルコとの関係改善(2012年以来となるムハンマド・ビン・ザーイド・アブダビ皇太子のアンカラ訪問)、シリアとの関係改善(2011年以来となるハイレベルによるアサド大統領訪問)である。イランとも、11月にアブドッラー・ビン・ザーイド外務・国際協力相手がバーゲリー外務事務次官兼核協議首席交渉官とアブダビで会談する等(ライーシー政権誕生以降、イラン政府関係者のUAE公式訪問は初めて)、対立関係が緩和される兆しが見えていた。

 ただし、対イラン関係が順調に進展するかについては、その程度やペースとともに現時点で不明瞭であり、今次会談についても何らかの成果があったとは報じられていない。そもそもUAEとカタル、トルコ、シリアとの関係悪化は、主に「アラブの春」以降、カタルであればトルコないしムスリム同胞団、トルコであればムスリム同胞団、シリアであればイランが原因となって生じた。言い換えれば、カタル、トルコ、シリアをUAEは根本的な脅威と見ていたわけではない。一方でイランは「根本的な脅威」に該当するため、カタル、トルコ、シリアの場合よりもUAEが関係改善に慎重になるのは当然だと言えよう。

 

【参考情報】

『中東かわら版』No.80「UAE・シリア:シリア内戦以降、初となるハイレベル会談」

『中東かわら版』No.86「トルコ・UAE:ムハンマド・ビン・ザーイド・アブダビ皇太子のトルコ公式訪問」

(研究員 高尾 賢一郎)

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