中東かわら版

№90 アルジェリア:前倒しの地方議会選挙の暫定結果

 2021年11月27日、地方自治体議会(APC)と県議会(APW)の選挙が実施され、30日に国家選挙独立機構(ANIE)が暫定結果を発表した(表1、2)。今般の地方選挙は、タブーン大統領が政治改革の一環として議会任期を1年短縮した前倒しの選挙である。投票率はAPCが36.58%、APWが34.76%であった。

 

表1 APCの暫定結果

政党

略称

過半数の得票数を記録した

自治体数

(2017年選挙からの増減)

民族解放戦線

FLN

124

(-479)

無所属候補

 

91

(+56)

民主国民連合

RND

58

(-393)

社会主義勢力戦線

FFS

47

(-17)

未来戦線

FM

34

(-37)

国民建設運動党

EL BINA

17

(+9)

平和社会運動

MSP

10

(-39)

※地方自治体の議会総数は1541。政党別の結果は各種報道で確認可能な6政党と無所属候補のみ。

(出所)国営通信「APS」及びニュースサイト「TSA」をもとに筆者作成。

 

表2 APWの暫定結果

政党

略称

議席数

(2017年選挙からの増減)

民族解放戦線

FLN

471

(-240)

無所属候補

 

443

(+412)

民主国民連合

RND

366

(-161)

未来戦線

FM

304

(+173)

平和社会運動

MSP

239

(+87)

社会主義勢力戦線

FFS

40

(-23)

※政党別の結果は各種報道で確認可能な5政党と無所属候補のみ。

(出所)国営通信「APS」及びニュースサイト「TSA」をもとに筆者作成。

 

評価

 今般の地方選挙で特筆すべき点は、連立与党の支持低下である。FLNとRNDは各議会で第1党と第3党の地位を占めたが、2017年の地方選挙よりも得票数を伸ばせなかった。特に、FLNがAPC選挙で過半数を得た自治体数は前回の603から124まで減少するなど、全国で組織的動員力を有する同党は大苦戦したと言える。一方で、無所属候補は今年6月の議会選挙と同様に得票を増やし、連立与党に不満を持つ国民の受け皿となった。

 タブーン政権を支える連立与党FLN・RNDが国民の支持を維持できていない点は、タブーン政権の政治改革が同政権への支持回復につながっていないことを示唆する。投票率は2017年の地方選挙時よりAPC、APWともに約10ポイントも低下しており、国民はタブーン政権による前倒し選挙を評価しておらず、多くの国民が現体制を引き続き受け入れていない側面が見られる。 

 他方、反政府デモはカビール地方を中心に散発するものの、2019年時のような全国規模に発展しておらず、また今次選挙をボイコットすると予想されたカビール地方基盤のFFSが選挙に参加するなど、反政府デモの縮小や野党共闘の崩れはタブーン政権の体制存続にとって追い風となっている。

 

【参考情報】

<中東かわら版>

・「アルジェリア:前倒し下院選挙の暫定結果」No.31(2021年6月16日)

 

(研究員 高橋 雅英)

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