中東かわら版

№52 サウジアラビア:ターリバーンの政権奪取への反応

 2021年8月15日、アフガニスタンでターリバーンが首都カーブルを攻略し、ガニー政権が事実上崩壊したことを受けて、サウジ外務省は、ターリバーンを含むすべてのアフガニスタン勢力が、同国内の治安・安定・生命・財産を守るよう望むとの声明を発出した。現時点ではこれが唯一の公式声明となり、サウジとしてはアフガニスタン情勢を様子見している状況だ。なお他のGCC諸国については、UAEやクウェイトも同様で、アフガニスタンの和平交渉の仲介役であったカタルも、平和的な権力移行への希望表明程度にとどめている。

 

評価

 ターリバーンの政権奪取に対して、サウジが「ターリバーンの出方次第」ととれる姿勢を示す理由は、米国の出方を気にしていることもあろうが、そもそもターリバーン単体を脅威なり同盟なりとして、際立った存在と見ていないことがある。サウジにとって「敵」となる基準は、「イランの革命の輸出に協力する」ことと、「自国を直接に害する、中傷する」ことの2点に集約され、ターリバーンは基本的にこれらに該当しない。

 かといって、過去のターリバーン政権と同様、サウジが同派の承認に向かうかというと、そういうわけではない。なぜならサウジは、「ターリバーンがアル=カーイダとの関係を断たない限り、同派とは決して手を組まない」という姿勢を明確に打ち出している。サウジとしては、ターリバーンが女性の教育をどうするのか云々よりも、この点に集中して、今後「様子見」を続けていくのだと思われる。

(研究員 高尾 賢一郎)

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