中東かわら版

№127 GCC・エジプト:カタル国交回復の進展

 2021年1月5日にサウジ・UAE・バハレーン・エジプト(4カ国)とカタルの国交回復が報じられて以降、以下表の通り4カ国とカタルとの間での国境開放、及び外交関係再開に向けた動きが進んでいる。

8日

●UAE政府はカタルとの陸海空の国境を1月9日に開放すると発表

11日

●国交回復後、初となるカタル・サウジ間の就航便(ドーハ発のカタル航空)がリヤドに到着。陸路でも往来が再開

●バハレーン民間航空局はカタルのバハレーン領空の通過を認めると発表

13日

●カタル航空は18日よりカイロ、25日よりアレクサンドリアとの就航便を再開すると発表

14日

●UAEシャルジャ首長国のLCCエア・アラビアがドーハとの直行便を18日に再開すると発表

15日

●サウジのファイサル・ビン・ファルハーン外相が、数日以内にドーハのサウジ大使館業務を再開すると発表

18日

●エジプト航空とカタル航空のカイロ・ドーハ便が就航再開

19日

●カタル航空はドバイ・アブダビへの直行便が27-28日に就航再開と発表

20日

●エジプト外務省がカタルとの間で外交関係再開の具体的な合意が交わされたとの声明を発出

●Reutersは米国・UAEとの間で F-35戦闘機50機と18機以下の軍用ドローンの売却について合意が交わされたと報道

 

評価

 表の通り、4カ国とカタルとの国交回復はひとまず交通の再開から始まり、各国とも今後の関係構築に向けて着手していると報じられている。ただし現状では、カタルとの融和ムードを醸成・喧伝しているのはサウジに限られ、他の国々はカタルとの国交回復の進捗について多くは語っていない。

 エジプトに関しては、諜報筋の話として、エジプト・UAE・カタルが16日に会合を開き、カタル外務省が2国治安当局に対して、①カタルはエジプト内政に介入しないこと、②衛星放送局アルジャジーラの報道方針を変えることの2つを約束したと報じられた。カタル側はこれを否定したが、そもそもエジプトがカタル断交に加わった理由は、カタルがムスリム同胞団を支援する上で、アルジャジーラを通してシーシー政権批判等を続けてきたためである。エジプト政府は依然として同胞団の地域的影響力を警戒しており、これを抜きにカタルとの国交回復はありえない点を考慮すれば、上記会合が実際に行われた可能性は高いだろう(20日のエジプト外務省による発表はこれを受けてのものと考えられる)。

 いずれにしても、コロナ禍による経済的影響が長引く中、人の往来と物流の再開は各国にとって喜ばしいことであり、例えばサウジは4月以降の海外からの観光客の全面受け入れに向けて準備を進めている。4カ国とカタルにとっては、国交回復を経済回復の打開策としたいところだ。

 

【参考】

中東かわら版「GCC:首脳会合の開催とカタルとの国交回復」No.123(2021年1月6 日)

(研究員 高尾 賢一郎)
(上席研究員 金谷 美紗)

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