中東かわら版

№125 チュニジア:内閣改造(マシーシー第2次内閣)の発表

  2021年1月16日、マシーシー首相は新閣僚11人の任命を含む内閣改造を発表した。新閣僚は以下の通りである。

 

法相

ユースフ・ザワーギー

前関税局長

内相

ワリード・ザフビー

内閣官房長官(2020年9月~)

国有資産・不動産問題相

アブドゥルラティーフ・ミーサーウィー

元ベン・アルース県知事

環境・地方問題相

シャハーブ・ベン・アフマド

前輸出促進センター(CEPEX)理事長

保健相

ハーディー・ハイリー

元スース大学医学部長

産業・中小企業相

【改編】

リダー・ベン・マスバーフ

元ガフサリン鉱石会社社長

元ベルギー大使(2018年)

エネルギー・鉱業相

【改編】

ソフィヤーン・ベン・トゥーニス

チュニジアの心党所属

元ゼネラル・エレクトリック北アフリカ支社長

農業・水資源相

ウサーマ・ハリージー

元農業相(2020年2-9月)

文化・遺産開発相

ユースフ・ベン・イブラーヒーム

元文化相首席補佐官(2015年)

職業訓練・雇用・社会経済・連帯相

ユースフ・ファティーラ

前国家雇用自営業機構(ANETI)事務局長

青年・スポーツ相

ザカリヤー・ベルフージャ

BNPパリバ、フランス開発庁で勤務

(出所)国営通信「TAP」

 

評価

 今般、マシーシー首相が政権発足から4カ月後で内閣改造を発表した背景には、サイード大統領とマシーシー首相の対立があると考えられる。まず、大統領と首相は政治の主導権を争っており、政府の長であるマシーシー首相は大統領による政権運営への介入を阻みたい思惑を持つ。そのため、元大統領選対委員のシャルフッディーン内相を解任し、現内閣官房長官のザフビーを後任者に任命した。さらにマシーシー首相は、連立与党のナフダ党に近い立場とされるハリージー元農業相や、チュニジアの心党のベン・トゥーニス党員も入閣させるなど、議会での連立与党との連携強化を通じて大統領に対抗する狙いである。

 こうした政治面での緊張関係が存在する一方、COVID-19感染状況の深刻化や、経済悪化に伴う社会不安の高まりが顕著となっている。新規感染者及び死者数は増加傾向にあり、特に累計死者数は昨年11月1日時の1348人から12月1日時には3260人に急増し、直近1月19日時で5844人に達した。また、経済悪化に伴う抗議活動が多発するなど、国民の不満は高まっている。こうした状況下、1月15日にシリアナ県で警察官が羊飼いの男性を暴行したことを機に、若者中心の抗議活動が暴徒化し、発生地は内陸部から首都チュニスや東部沿岸地域にも拡大している。チュニジアは今年、ベン・アリー体制が崩壊したアラブ政変から10年目を迎えるが、社会経済問題は依然解決していない現状が見られる。今回の内閣改造の発表を機に大統領・首相間の対立が激化した場合、COVID-19感染拡大対策や経済再建策の対応に遅れが生じる恐れもあるだろう。

(研究員 高橋 雅英)

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