中東かわら版

№100 シリア:ムアッリム副首相兼外相の死去

 2020年11月16日、ワリード・ムアッリム副首相兼外相が死亡した。79歳だった。死因は公表されていないが、2014年に心臓手術を受けたことがある。ムアッリム氏は2006年から外相を務め、2012年からは副首相も兼任し、名実ともに内戦下のアサド政権を支えた人物であった。それ以前の1990年代には、駐米大使やシリア・イスラエル和平交渉のシリア側代表を務めた。

 ムアッリム副首相兼外相の死去を受けて、レバノンのアウン大統領・ベッリ国会議長・ヒズブッラー、パレスチナ自治政府のアッバース大統領、オマーンのブーサイーディー外相、イランのザリーフ外相、ロシアのラブロフ外相、ベネズエラのマドゥロ大統領、キューバ外相、南ア外相などが弔辞を発表した。

 

評価

 後任の外相には、ファイサル・ミクダード副外相が任命されるとの見方がある。シリアは、北西部・北東部における反体制派やトルコ軍との戦闘、経済危機、復興支援と投資呼び込み、憲法委員会による新憲法策定とシリア紛争の政治的解決、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急人道支援の必要性、といった数多くの課題を抱えている。これらの課題に際して、同盟国のロシアやイランとの関係を維持しながら経済面では国土・経済の復興を進めつつ、アサド政権の維持に努めていく必要があることから、ムアッリム氏の外交路線を引き継ぐ人物が後任に任命されると思われる。

(上席研究員 金谷 美紗)

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