中東かわら版

№61 オマーン:内閣改造と省庁再編

 2020年8月18日、ハイサム国王は国王令を出し、内閣改造を行った。新しい閣僚一覧は以下の通り。

役職名

氏名

副首相(閣僚評議会担当)

ファハド・ビン・マフムード・アール・サイード

副首相(国防担当)

シハーブ・ビン・ターリク・アール・サイード 

文化・スポーツ・青年相★

ジー・ヤザン・ビン・ハイサム・ビン・ターリク(国王息子)

宮内相

ハーリド・ビン・ヒラール・ビン・サウード・ブーサイーディー

国王事務所相

スルターン・ビン・ムハンマド・ヌウマーニー

内相

ハムード・ビン・ファイサル・ブーサイーディー

外相★

バドル・ビン・ハマド・ブーサイーディー(前外務事務総長)

財相★

スルターン・ビン・サーリム・ハブシー(前オマーン投資庁長官)

ワクフ・宗教相

アブドッラー・ビン・ムハンマド・サールミー

エネルギー・鉱物相★

ムハンマド・ビン・ハマド・ルムヒー(前石油・ガス相)

保健相

アフマド・ビン・ムハンマド・サイーディー

教育相

マディーハ・ビント・アフマド・シャイバーニーヤ(女性)

国務相兼マスカット行政区知事

サウード・ビン・ヒラール・ブーサイーディー

法務・司法事項相★

アブドッラー・ビン・ムハンマド・サイーディー(前法相)

情報相

アブドッラー・ビン・ナーシル・ハッラーシー(前ラジオ・テレビ庁長官)

国務相兼ドファール行政区知事

ムハンマド・ビン・スルターン・ブーサイーディー

遺産・観光相★

サーリム・ビン・ムハンマド・マフルーキー(前遺産・文化相)

農業・漁業・水資源相★

サウード・ビン・ハムード・ハブシー(前農業・漁業相)

住宅・都市計画相★

ハルファーン・ビン・サイード・シュアイリー

高等教育・科学研究・改革相★

ラフマ・ビント・イブラーヒーム・サイード・マフルーキーヤ(女性)

交通・通信・情報技術相★

サイード・ビン・フムード・マウワリー

経済相★

サイード・ビン・ムハンマド・サクリー(オマーン経済評議会委員)

商業・工業・投資促進相★

カイス・ビン・ムハンマド・ユースフ(オマーン商工会議所会長)

社会開発相★

ライラー・ビント・アフマド・ナジャール(女性)

労働相★

マハード・ビン・サイード・バーウワイン(オマーン海洋大学学長)

★は新設ポスト。氏名の内、新設ポスト以外は新任なし。

 

評価

 今次の内閣改造・省庁再編は、現在進行中の国家改革計画「オマーン・ビジョン2040」に沿った政策運営、またこれも視野に入れての行政機関のスリム化を目指したものとされる。したがって、副首相以下、据え置かれたポストについてはいずれの閣僚も留任となった。

 一方で新設ポストに関しては、国王が兼任してきた首相・外相・財相・国防相の内、外相・財相が個別に設けられた点が、国王の権力分散として注目を浴びている。もっとも、国王が首相職はさておき、外務・財務・国防でどれほどイニシアチブをとっていたかは不明瞭な面もある。このため、実務面で外務担当相と財務担当相がそれぞれ外相・財相に格上げされたと理解する方が妥当かもしれない。

 なおこれに関連して、1982年から外務担当国務相、1997年から外務担当相を務めてきたユースフ・ビン・アラウィー氏が退任したことは周辺国で大きく報じられている。これは同氏がオマーンの不介入外交の象徴として長く外交の一線で活動してきたためである。ただし彼自身がオマーン外交の決定権を持っていたわけではないため、退任が引き金となって従来の外交方針が急速に変更される可能性は低いと思われる。

 また、新設された文化・スポーツ・青年相には国王子息であるジー・ヤザン王子が任命された。一見すると主要な閣僚ポストには思われない同職だが、ハイサム現国王の前職が遺産・文化相であったように、オマーンの重要ポストは周辺国と単純に比較できるものではない。国内では副首相の次に同職に言及している報道も見られ、プロトコル上で一定の注意が払われているようだ。

 

【参考】

中東分析レポート「ポスト・カーブース体制のオマーンに求められる統治機構改革」No.R19-11(2020年2月発行)※会員限定

(研究員 高尾 賢一郎)

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