中東かわら版

№24 サウジアラビア:新型コロナウイルス対策事情(各種規制緩和に関する新ガイドライン)

 2020年5月26日、内務省は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止の一環で、経済活動の規制緩和を盛り込んだ新しいガイドラインを以下の通り発表した。

 

1. 5月28日〜30日

(1)マッカ市を除き、外出禁止時間を変更(15-6時)。

(2)外出禁止時間外の自家用車による州・都市間移動を許可。

(3)卸売・小売業、及びショッピングモール内の店舗の営業を許可。

(4)美理容室、スポーツクラブ、娯楽施設、映画館等の営業は引き続き禁止。

 

2. 5月31日〜6月20日

(1)マッカ市を除き、外出禁止時間を変更(20-6時)。

(2)モスクでの金曜礼拝を許可。ただしマッカ市内のモスクを除く。

(3)マッカの聖モスクでの礼拝は人数制限を継続。

(4)国内航空会社による国内線の運航、及び鉄道の運行を再開。

(5)飲食店の店内注文を許可。1.(4)は継続。

(6)結婚式・葬式等の集会は50人以下であれば許可。

 

3. 6月21日〜

(1)外出制限なし。

(2)全ての経済活動の再開を許可。

 

評価

 ラマダーン月後の祝日(イード)が終わり、上記の通り経済活動や国内移動の順次再開が決定された。国内のCOVID-19新規感染者数は2000人前後/日、死者数は10人前後/日の推移を示す一方、5月18日より回復者数が感染中患者の数を上回ったことで(下図)、当局は国内のCOVID-19拡大が収束に向かっているとの見方を同時期から強調してきた。

 

図:サウジアラビア国内の5月における感染者数・回復者数・感染中患者数

 

(出所:現地報道をもとに筆者作成)

 

 一方、マッカがこうした緩和の一部から除外されている点は重要だ。現地のイスラーム暦では7月22日に12月(巡礼月)を迎える。サウジ側としては、同時期までに国内のCOVID-19拡大の収束を示し、例年通りの巡礼者の受け入れを果たしたいとの思惑だろう。これに関連して、国際線の運航中止(3月15日〜)以降に期限が切れた観光査証の無料延長も決定された。国内移動の制限緩和と合わせて、今後インバウンド消費による経済回復を見込んでいる。

(研究員 高尾 賢一郎)

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