中東かわら版

№7 GCC:新型コロナウイルス対策事情(労働者への補償)

 新型コロナウイルス感染(COVID-19)拡大を受けて、GCC各国で休業・外出禁止等の措置が課されている。この一方、各国政府の大半は早々に労働者への補償を打ち出してきた。各国の補償についての主な報道は以下表の通り。

 

表 GCC各国政府が発表した主な労働者補償(4月14日時点)

国名

補償

UAE

●自宅勤務者への給料全額補償(ドバイ首長国)

オマーン

●諮問評議会が民間企業に給与を引き下げないよう要請

カタル

●750億リヤル(約206億米ドル)の特別予算

●民間企業への労働者給与含む補償

クウェイト

●民間企業や保険会社への補償

●企業経営者への低金利貸付

サウジアラビア

●90億リヤル(24億米ドル)の特別予算

●休業者への給与補償

●失業保険金への補充(月額給与額60% → 100%)

バハレーン

●43億ディナール(約114億米ドル)の特別予算

●住宅及び会社の電気・水代金を4月より3カ月間引き下げ

●民間企業の休業者への3カ月分給与補償

出所:報道をもとに筆者作成

 

評価

 GCC諸国は、COVID-19拡大を受けて一斉休校・都市封鎖・外出禁止を発令し、これに伴って民間企業の労働者は食料品や医薬品をはじめ、生活基盤に関する分野を除いて休業を課せられた。これらの違反や感染疑いの未報告に対しては、国によって数万ドル相当の高額な罰金刑が科される。一方で各国政府は外国人を含む労働者への金銭補償を早々に打ち出す、いわば「アメとムチ」によってCOVID-19拡大防止に取り組んでいる。

 各国が「アメ」を用意する背景としては、もちろん財政的な余裕もあろうが、国民への報恩や報償が体制の正当性・安定性に強く影響する君主制国家としての性格が挙げられよう。各国政府としては、COVID-19拡大防止対策が国民の生活に負担を強いて、このことが政府に対する不満や、他国の内政干渉等につながらないようにとの思惑もあるだろう。

(研究員 高尾 賢一郎)

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