中東かわら版

№2 UAE:新型コロナウイルス対策事情

 2020年4月4日、UAEのドバイ政府は、新型コロナウイルス感染(COVID-19)拡大を受けて、同日夜より24時間の外出禁止を命じた。外出が可能な条件は以下の通り。

1. 食料品等の生活必需品、医薬品の購入を目的とする(各家庭1名のみ)

2. 各種医療サービスを受けることを目的とする

3. マスクと手袋を着用し、社交距離を保つ

4. 以下の生活基盤部門に従事する労働者の通勤

医療サービス(病院、診療所、薬局)、食料品販売、宅配サービス(食品・医薬品)、飲食店(宅配のみ)、医薬品や医療品の製造、生活基盤に関する製造およびサプライ・チェーン、水・電気・石油・ガス・ガソリンスタンド・冷房・通信・報道・空港・航空会社・港湾・輸送・関税・国境・治安および警備サービス、COVID-19関連(官民)、公共交通機関(バス・タクシーのみ)、地方行政および官民の公衆衛生(ごみ収集、下水管理、洗浄・消毒)、建設業(当局からの許可が必要)

※以下は8〜14時まで勤務可能

銀行・金融サービス、福祉サービス、ランドリーサービス(当局からの許可が必要)、各種メンテナンスサービス

以上に該当しない外出は罰則の対象となる(罰則は現時点で不明ながら、禁錮ないし高額の罰金が予想されれる)。

 

評価

 

 世界各国と同様、GCC諸国内のCOVID-19は依然として拡大傾向にある(図表1)。

 

図表1 感染者・死者・回復者・感染中の累計(4月5日時点)

 

感染者数

死亡者数

回復者数

感染中

サウジ

2385

29

420

1936

UAE

1798

10

144

1644

カタル

1604

4

123

1477

クウェイト

556

1

99

456

オマーン

298

2

61

235

バハレーン

700

4

431

265

出典:報道を元に作成(以下同じ)

 

 とりわけUAEは、カタルとともに4月に入ってからの感染者数増加が著しく(図表2)、今次措置はこのことを反映したものと思われる。これら2国の感染者累計はサウジの同累計に迫る勢いを見せている。

 

図表2 GCC諸国の感染者累計の推移(3/1〜4/5)

 

加えて、日々の感染者数と回復者数の累計に大きな開きがあることも、UAEのCOVID-19拡大の深刻さを示す(図表3)。このことは、GCCの中で唯一、回復者累計が感染中人数を上回り、その差を広げているバハレーンと比べれば顕著である(図表4)。

 

図表3 UAEの感染者・死者・回復者累計、および感染中人数の推移(3/1〜4/5)

 

 

図表4 バハレーンの感染者・死者・回復者累計、および感染中人数の推移(3/1〜4/5)

 

 感染者・死者・回復者のいずれも、日数が経つほど累計が上昇するのは当然である。一方、下降が可能な感染中人数において推移が芳しくない(回復者数の著しい上昇が見られない)ことが、UAE、カタル、そしておそらく今後クウェイトが直面する課題と言える。

(研究員 高尾 賢一郎)

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