№119 チュニジア:大統領選挙決選投票でカイス・サイードが勝利
2019年10月13日、大統領選挙の決選投票が行われ、同17日に最終結果が発表された。無所属のカイス・サイード氏が、ナビール・カルウィー氏を大差で引き離して勝利した。
【大統領選挙最終結果】
- 有権者登録数 7,074,566
- 投票総数 3,892,085(投票率57.8%)
- 無効票 55,348
- 白票 15,912
候補者名 |
備考 |
得票数 |
得票率 |
カイス・サイード |
無所属;憲法学教授 |
2,777,931 |
72.71% |
ナビール・カルウィー |
チュニジアの心党党首;TV局社主 |
1,042,894 |
27.29% |
(出所)独立最高選挙機構(ISIE)、各紙より筆者作成。
評価
今次大統領選挙は、ナビール・カルウィー氏が汚職容疑で逮捕・拘留されたまま選挙戦が進むという異常な状況で行われた。同氏は決選投票直前の10月9日に釈放が認められ、自ら選挙運動を行えたのは僅かな時間だった。
しかし、同氏が敗北した理由は自ら選挙運動を行えた時間が僅かであったことではないだろう。大統領選挙第1回投票、議会選挙と続く今回の選挙過程からわかることは、有権者は既存政治からの脱却を訴えた候補者・政党を選んできたということである。政界の中心にいないサイード氏とカルウィー氏が大統領選挙で多くの票を獲得し、議会選挙においてもほぼ無名の政党や新党が既存の政党を抑えて議席を獲得した。カルウィー氏は貧困対策に熱心な人物と見られていたが、それでも決選投票でサイード氏に敗れた理由は、自身にかけられた汚職の罪、そしてかつてチュニジア呼びかけ党の中核メンバーであったことから「既存政治の利益を代表する人物」と見なされたためと思われる。全く政治経験が無く、生真面目な人柄のサイード氏と比べると、カルウィー氏が既存政治側と判断されたことは想像に難くない。
なお、決選投票においてサイード氏支持を表明した政党は、ナフダ党、民主潮流党・人民運動・共和国党などの左派、愛の潮流党などであった。特にナフダ党の支持はサイード氏勝利への集票に大きな役割を果たしたと考えられる。
ナフダ党と左派政党がサイード氏支持で一時的に共闘したとはいえ、両者の対立の溝は深く、埋まる気配はない。特に世俗的な左派政党はナフダ党をイスラーム主義的目標を放棄していないと考えている。今後も続くであろう政党間対立について、新大統領となるカイス・サイード氏はシブシー前大統領のように介入するのか、または別の方法で調整するのか注目される。
*関連情報として下記もご参照ください。
(研究員 金谷 美紗)
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