中東かわら版

№116 イラン:紅海でのイラン石油タンカーの爆発

 2019年10月11日、国営通信『IRNA』(第一報第二報)は、イラン石油タンカー1隻の船体の一部が爆発したと報じたところ、その概要は以下の通りである。

 

  • 11日午前5:00~5:20頃、サウジのジェッダ沖合60マイル(※下図を参照)で、イラン国営石油会社(NIOC)所有の石油タンカーSABITY(※他の報道機関ではSINOPAと報じられている)の船体の一部が爆発した。
  • タンカーにある石油タンク2つがミサイルと考えられるものによる個別の爆発で被害を受け、現在タンク内部から紅海へ石油が流出している。
  • 船員は全員無事。また、現在、タンカーも安定した航海を継続中。
  • 技師が事故の原因の調査に当たっている。この事件はテロ行為によるものである可能性がある(※なお、この文言は第一報に記載されたが、第二報には記載がない)。

図:現場周辺地図

 

出所:Google Map及び公開情報より筆者作成。

 

評価

 船舶追跡サービスを提供する「Marine Traffic」で船名SABITYは存在しない。当該石油タンカーがイラン船籍SINOPA(旧名SUSANGIRD)だとすると、パラディプ(インド)からスエズ運河に向かう途中であったと考えられる。

 現時点で、事案の詳細や原因は明らかにされておらず、また、いかなる集団からも犯行声明の類は発出されていない。最近、ペルシャ湾では石油タンカーが襲撃される事件が散発的に発生しており、今次事案を過去の事案と結びつけて論じる向きもあろう。しかし、現下の流動的な状況では、予断や憶測に惑わされず正確な情報に基づく分析が重要だろう。

(研究員 青木 健太)

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