中東かわら版

№78 バハレーン:有志連合結成案をめぐるイランとの批判合戦

 バハレーンが、米国主導の有志連合結成案の主要関係国としての立場から、イランとの批判合戦を繰り広げている。主要なものは以下の通り。

<2019年8月6日>

【バハレーン】ハーリド・ビン・アフマド外相は、65カ国が参加する「航海及び航空の安全保障会議」の10月開催を表明した。これにあたり、イランが無責任に各国の努力を妨害していると批判した。また、アリー・ザーイド第二副国会議長も、同会議に政府が尽力すると明言した。

【イラン】ロウハー二ー大統領は、「イランとの戦争は、あらゆる戦争の母」と発言し、対イラン軍事行動のムード醸成を牽制した。

 

<8月8日>

【イラン】ムーサーヴィー外務報道官は、「航海及び航空の安全保障会議」が、イランを非難するための「疑わしい」「挑発的」なもので、地域の不安定化を招くと批判した。加えて、イスラエルのペルシャ湾への干渉につながると警告した。アミール・ハータミー国防相も、イスラエルの関与が大惨事をもたらすと警告した。

 

<8月11日>

【イラン】ザリーフ外相は、1988年のイラン航空655便撃墜事件(注)を引き合いに出し、ペルシャ湾での軍備増強がさらなる不安定化につながると警告した。

(注)イラン・イラク戦争中、ホルムズ海峡に停泊していた米軍の巡洋艦が、イラン航空の民間機を誤射し、290名の死者が発生した事件。

 

 

評価

 バハレーンは、現時点で唯一、有志連合結成案への参加表明をしているGCC加盟国で、本件における米国のカウンターパートとして、域内でプレゼンス発揮の機会を得ている。7月に開催が告知された海上安全保障会議についても、65カ国の参加が改めて強調された。

 これにあたり、難しい舵取りを迫られると思われるのが、イスラエルの扱いである。発端と言えるのは6日、イスラエルのカッツ外相が、諜報部門でイスラエルが有志連合結成を支援していると発言したことである(上記8日のイラン側の発言はこれを受けたもの)。これを受けて12日、イラクのハキーム外相が、イスラエルの有志連合参加に反対すると表明した。イラクは有志連合の結成案やこれへの参加について、明確な立場を示していなかったが、ここでは有志連合のあり方について反対する意見を表明をした(有志連合結成案自体への反対とは言い切れない)。「イスラーム国」掃討後の復興に向けて、周辺各国から援助を受けているイラクの立場でこうした発言ができることは、有志連合結成案に賛成する国が域内では数少ない現状を指しているとも言えよう。

  

【参考】

「バハレーン:海上安全保障会議の開催を発表」『中東トピックス』2019年7月号」 ※会員限定 

「バハレーン:米国の有志連合結成案への協力と各国の反応」『中東かわら版』No.72

「GCC:米国主導の有志連合への反応」『中東かわら版』No.74

(研究員 高尾 賢一郎)

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