中東かわら版

№41 GCC:マッカでのアラブ連盟会合とOICサミット

 5月30~31日、GCC緊急会合(『中東かわら版』No.39)と並行して、サウジのサルマーン国王の呼びかけによるアラブ連盟緊急会合、及びイスラーム協力機構(OIC)第14回サミットがマッカで開催された。報道に基づくそれぞれの最終声明概要は以下の通り。

 

【アラブ連盟緊急会合】

  1. イランによるフーシー派(正式名称:アンサール・アッラー)への支援、及び同グループによるサウジ石油施設攻撃、イラン製弾道ミサイル発射、UAE領海での商船攻撃を含めた武装行動を非難する。
  2. イランによるバハレーン介入、テロリスト支援・育成、武器・爆発物の密輸、並びに宗派対立の扇動を非難し、アラブ諸国は善隣外交を通じて団結する。
  3. イランによるUAEの三島占有を非難する。
  4. イランが資金援助する衛星放送のアラブ諸国での放映規制を継続する。
  5. イランによるシリア紛争への介入を非難する。 

 

【OIC第14回サミット】

  1. UAE領海での商船攻撃を非難する。
  2. イエメンへの人道的支援を行う。
  3. パレスチナにおける長期占領と入植地拡大、並びにエルサレムをイスラエルの首都とする米国政府の認識に反対し、パレスチナ人が不可分の権利を獲得するための支援を継続する。
  4. イスラエルによるゴラン高原占領を非難し、1967年6月4日時点の境界まで撤退することを求める。
  5. スーダン安定化のための政治的協力を行う。
  6. 国連をはじめとする国際機関に、3月15日(※)を「反イスラモフォビアの日」とするよう要請する。

※2019年、クライストチャーチのモスクで銃乱射事件が起きた日

 

評価

 アラブ連盟緊急会合はGCC緊急会合以上にイラン批判に終始し、最終声明ではサウジによるイラン包囲網のイニシアティブが明確に反映された形となったが、これに対してイラクが早々に反対の意を示した。同国のアブドゥルマフディー首相は5月22日にクウェイトのサバーフ首長を訪問し、イランをめぐる域内の緊張が戦争に発展しうるとの懸念を示しており、今次のイラン包囲網への呼びかけを過剰と判断したようだ。

 また6月3日には、カタルがGCC及びアラブ連盟緊急会合の最終声明に反対の意を示した。同国はこの理由として、同声明の一部がカタルの外交政策と矛盾する、GCC団結の前にカタル封鎖の問題解決が必要である、声明の内容は一部の国が全体に諮ることなく事前に決めたものである、目指すべきは戦争の機運の鼓舞ではなく域内の緊張緩和であると説明した上で、今次の一連の会合がパレスチナ問題、リビア紛争、イエメン紛争といった地域の重要課題を軽視したと批判した。

 こうした足並みの不一致について、会合を主導したサウジは「カタルの離反は驚くに値しない」(ジュベイル外務担当国務相)と平静を保っているが、「主戦論者」というイメージはサウジにとって有利に働くとは言い難い。イランのザリーフ外相が積極的な歴訪を通じて各国との対話チャンネルの拡大に努め、米国・イラン関係が一時期の一触即発の状況に比べれば交渉の段階に移りつつある中、サウジによるイラン包囲網が逆に慎重論を促したようにも思われる。

 

(研究員 高尾 賢一郎)

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