中東かわら版

№19 バハレーン:139名に「テロ」への関与で有罪判決

 4月16日、バハレーンの高等刑事裁判所は、イランの革命防衛隊とつながりを持つとされるシーア派団体「バハレーンのヒズブッラー」への関与で起訴されていた169名の被告に対する裁判(109名出席、60名欠席)を行い、139名を有罪、30名を無罪とする判決を下した。当局の発表を基にした国内外の報道によれば、判決内容は以下の通り。

 

罪状:政府関係者殺害や公共の建造物破壊の計画立案、これらに必要な道具や武器、資金の調達、この過程での一般市民や警察官を対象とした教唆、勧誘、暴力など、「テロ」に関するあらゆる行為への関与。

刑罰内容:139名の内、(1)138名の国籍を剥奪、(2)終身刑が69名、禁固10年が39名、禁固7年が23名、禁固5年が1名、禁固3年が7名、(3)罰金100,000バハレーン・ディナール(BD。1BD≒297円)が96名、500BDが12名、231BDが1名。

 

評価

 「アラブの春」以降、シーア派住民による抗議行動の活発化を背景に、バハレーン政府は自国民の政治活動、とりわけイランとの関係が疑われるケースを積極的に取り締まっている。最近では2019年2月、「座り込み」のデモに参加した167名に対しても有罪判決が下された。

 当局がとる特徴的な措置として、今次の判決にも加えられた国籍剥奪が挙げられる。2018年には約300名が対象となり、2012年以来、国籍を剥奪された国民の数は900名に及ぶ。これに対しては、上述したデモ参加者の拘束とともに欧米のメディアやアムネスティ・インターナショナルのような国際人権団体からその都度批判が寄せられるものの、自国の治安維持を最優先する観点から、バハレーン政府がこれらの批判を考慮する向きは見られない。むしろ、4月8日にトランプ米大統領がイランの革命防衛隊を「外国テロ組織」(FTO)に指定すると発表し(『中東かわら版』No.9を参照)、サウジアラビアやUAEといった、イランと競合関係にある周辺国がこれを歓迎している現状は、「イランとの関係が疑われるケース」で人々を捕え、罰することへの躊躇をますますなくさせると思われる。

 もっとも、体制に異議を唱えることのリスクの高さを自国民に明示し続ける方法は、短期的に見れば治安維持の有効な方法であろうが、住民124万人の内、国籍保有者が半数以下の約57万人という人口構造に鑑みれば、国籍剥奪はむしろバハレーン政府にとって人口減少に伴う各種リスクにつながると言えなくもない。この点、政府が今後、「テロ」への刑罰を多様化させる必要も生じるものと思われる。

(研究員 高尾 賢一郎)

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