中東かわら版

№103 カタル:タミーム首長の訪日

 2019年1月28日~30日、カタルのタミーム首長一行は日本を訪問した。タミーム首長は安倍首相、河野外相と会談(29日)した他、天皇陛下、皇太子殿下と懇談(30日)した。両国は、既存の合同委員会などの枠組みを活用しつつ「戦略対話」を創設する旨の共同宣言を発表した。

 また、両国のビジネスフォーラムが開催され(30日)、その中でカタル商業会議所のハリーファ会長が、2018年の両国間の貿易額が160億ドル(2017年は131億ドル)に拡大したと述べた。

 

評価

 カタルは日本にとってLNGの重要な供給国であるが、近年の両国の関係は天然資源の輸出入にとどまらず、様々な分野に拡大している。今般の安倍首相とタミーム首長との会談でも、エネルギー・交通・発電などの事業への日本企業の参加が議題となったほか、両国は文化や経済・貿易・技術分野での協力覚書に調印した。

 一方、タミーム首長は訪日前に韓国、訪日後に中国を訪問しており、同首長の動向は日本との二国間関係の枠内にとどまらない。カタルは、2017年のサウジなどとの断交後、トルコ、イランなど中東域内の諸国との関係強化を通じてサウジなどからの圧力に対抗してきた。タミーム首長の韓国・日本・中国歴訪は、より広域的な外交活動によって近隣諸国との対立・危機に対処する方針の一環とも言えよう。このため、カタルとの関係強化が同国と対立するサウジなどからの反発を招く可能性もあり、日本としてもカタルとの「戦略対話」の創設と「既存の枠組みの活用」という言い回しの間でのバランスに注意を払い続けることとなろう。

(主席研究員 髙岡 豊)

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