№82 チュニジア:内閣改造(第4次シャーヒド内閣)
11月5日、シャーヒド首相は内閣改造を行った。13名が新たに大臣に任命された。以下は第4次シャーヒド内閣の顔ぶれである(大臣付き書記は省略)。なお、第3次内閣で観光・伝統工業相を務めたサルマー・ルーミー・ラキークは、大統領府長官に任命された。前任のサリーム・アザービーは10月20日に辞任していた。
役職 |
氏名 |
主な経歴 |
法相 |
カリーム・ジャムーシー |
元行政裁判事 |
公務員・行政刷新・総合政策相 |
カマール・ムルジャーン |
元外相(2011年1月);元国防相(2005-2010);元RCD;ムバーダラ党 |
保健相 |
アブドルラウーフ・シャリーフ |
前国会議員(2014-18);医師;チュニジア計画党 |
地方問題・環境相 |
ムフタール・ハンマーミー |
前地方分権化監視機構会長(地方問題・環境省) |
国有資産・土地問題相 |
ハーディー・マークニー(メクニ) |
前首相府官房長官 |
青年・スポーツ相 |
スニーヤ(ソニヤ)・ベンシャイフ |
前保健相付き書記 |
職業訓練・雇用相 |
サイイダ・ワニーシー(ウニーシー) |
前職業訓練・雇用相付き書記;元国会議員(2014-16);ナフダ運動 |
観光・伝統工業相 |
レネ・タラーブルシー(トラベルシ) |
Royal First Travel社CEO;ユダヤ教徒 |
運輸相 |
ヒシャーム・ベン・アフマド |
前貿易相付き書記;元運輸相付き書記 |
インフラ・住宅・空間計画相 |
ヌールッディーン・サールミー |
前高等教育・科学研究大臣官房長官 |
首相付き国務大臣(移住・在外チュニジア人担当) |
ラドワーン・アイヤーラ |
前運輸相 |
首相付き国務大臣(憲法機関・市民社会・人権担当) |
ムハンマド・ファーディル・ベン・マフフーズ |
元最高独立選挙機構委員;チュニジア計画党 |
首相付き国務大臣(社会連帯経済担当) |
シュクリー・ベン・ハサン |
前地方問題・環境相付き書記 |
評価
2016年8月に成立したシャーヒド内閣における4度目の内閣改造となったが、留任大臣を含めて全閣僚の顔ぶれを見ると、実務家が中心となり、二大政党のチュニジア呼びかけ党(以下、呼びかけ党)およびナフダ運動に加えていくつかの小政党から少数の閣僚が輩出されるという形式は、これまでと変わりない。
今回の内閣改造は、5月の地方議会選挙に端を発する呼びかけ党とシャーヒド首相の対立、呼びかけ党内部の対立、呼びかけ党とナフダ運動の対立が背景にある。地方議会選挙で呼びかけ党が第2党に転落すると、同党執行部長のハーフィズ・カーイド・シブシー(シブシー大統領の息子)はシャーヒド首相の経済政策の失敗を批判し、首相辞任を求めるようになった。シャーヒド首相とナフダ運動は首相辞任/内閣総辞職に反対し、ハーフィズら呼びかけ党幹部との対立は激化する一方となった。党幹部の意思決定過程の独占に反対する一部国会議員や地方幹部からの批判も相まって、10月には内閣改造を求める声が高まっていた。
シャーヒド首相は、経済政策を効率的に進めるために内閣改造を行ったと発表したが、実のところは連立与党内部の対立をいったん収束させるためであろう。しかし、この対立も収まる見込みは少ないと思われる。今後、チュニジア政界は2019年秋の大統領・議会選挙に向けて、さらに政党間の批判の応酬が繰り返されるだろう。
(研究員 金谷 美紗)
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