№124 パレスチナ:カイロでの政治対話
11月21日、カイロで、ファタハとハマースを含むパレスチナの13の政治組織が参加する会合が開催された。同会合は、ファタハとハマースの和解協議を支援するもの。事前の報道では会期は3日間とされたが、会議は2日で終了した。22日、参加した諸組織は、パレスチナ中央選挙管理委員会に2018年末までに、パレスチナ自治政府の大統領・評議会選挙及びPLOの議会であるパレスチナ民族評議会(PNC)の選挙を実施するよう求めた。選挙の実施時期は、アッバース大統領に一任した。23日、パレスチナ中央選挙管理委員会は、政治指導部が日時を決定すれば、選挙は実施できるとの声明を出した。
ファタハとハマースは、12月はじめにカイロで再び会合を開催して、合意が履行されない要因について協議する予定である。またエジプトは、近く代表団をガザに派遣して、合意履行の現状を調査する。
評価
ファタハとハマースを含むパレスチナの諸政治組織は、2018年末までに大統領と評議会の選挙を実施するよう求めた。これは、ファタハとハマースの和解が、約1年をかけて議論・実施されることを示唆するものかもしれない。ファタハとハマースは、12月1日までに、統一政府によるガザ統治を開始することで合意しているが、作業は遅れる公算が高い。しかし、日程順守は、さほど大きな要素ではない。これまでのファタハとハマースの和解協議は、セレモニー段階で挫折していたが、今回は、実質的な協議段階に入りつつある。両者の協議が簡単に中断されない背景には、ハマースをめぐる厳しい状況がある。ハマースは、ガザ統治に失敗した。組織内でもその認識は共有されているようだ。そのためハマースは、ガザ統治の責任を手放そうとしてる。ただし、ハマースは、ガザの治安維持の管轄権や軍事部門の保有など統治者としての特権を引き続き保持したいようだ。しかし、ファタハがハマースの条件を了承する可能性はないだろう。両者の意見の隔たりは大きいが、協議は継続されている。ファタハにもハマースにも、簡単に和解協議を中断できない理由がある。協議が挫折した場合、ガザ住民の苦境は、さらに深まる。ガザ住民の怒りは、ハマースだけではなくファタハ主導のパレスチナ自治政府にも向かうからである。
(中島主席研究員 中島 勇)
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