中東かわら版

№22 アルジェリア:下院選挙の暫定結果

 5月4日、下院・国民議会(定数462)の選挙が行われた。県を選挙区とする比例代表制で、足きり条項は5%である。即日開票され、翌5日、内務・地方政府省が以下のとおり暫定結果を発表した。後日、憲法評議会によって最終結果が発表される予定。 

 

政党・連合名

略称

議席数

民族解放戦線

FLN

164

(-57)

民主国民連合

RND

97

(+27)

平和社会運動・変化戦線同盟

HMS

33

 

無所属

 

28

 

アルジェリアの希望連合

TAJ

19

 

ナフダ・公正・建設連盟

N・A・B

15

 

社会主義勢力戦線

FFS

14

 

未来戦線

MF

14

 

アルジェリア人民運動

MPA

13

 

労働者党

PT

11

 

文化民主連合

RCD

9

 

共和国民同盟

ANR

8

 

国民合意運動

MEN

4

 

尊厳党(カラーマ党)

EL KARAMA

3

 

自由正義党

PLJ

2

 

青年党

PJ

2

 

アフド54

AHD 54

2

 

共和国民連合

RNR

2

 

インフィターフ運動

ME

2

 

国民闘争戦線

FMN

2

 

自由民主戦線

FDL

2

 

連帯と発展のための国民党

PNSD

2

 

アルジェリア国民戦線

FNA

1

 

新しい夜明け

PFJ

1

 

国民改革運動

M ISLAH

1

 

その他政党

 

11

 

(出所)アルジェリア内務・地方政府省

 

有権者数

23,251,503

投票総数

8,624,199

有効投票数

6,514,282

無効票数

2,109,917

投票率

37.09%

 

評価

 今回の議会選挙は、病気のブーテフリカ大統領の後継者が不明瞭という政治的環境、油価下落による歳入の激減や高い失業率という苦しい経済状況のなかで行われた。これらは、1962年の独立以来続くアルジェリアの権威主義体制の基盤を揺るがしうる条件ともいえる。したがって政府は、選挙で与党・民族解放戦線(FLN)が勝利することによって、とりわけ高い投票率が実現することで、現体制の磐石さを内外に示す必要があった。

 しかし投票率は前回2012年選挙よりも低下し、37%に留まった(2012年は43%)。有権者全体に広がる政治不信と政治への無関心から低投票率は予想されていたものの、前回より6ポイントも下がったことは、改めて軍・官僚・FLNといった権力中枢による政治運営に国民が不満を抱いていることを明らかにした。さらにFLNの議席数が前回選挙より57議席も減少した点や、無効票数が200万票(投票総数の24%)を越える点にも現政府への不支持が表れており、今後、政府は国民の支持を引き付けるための政策、特に雇用創出と投資促進の経済政策を迫られるだろう。

 他方、イスラーム主義政党は、平和社会運動・変化戦線同盟(HMS)とナフダ・公正・建設連盟(N・A・B)という2つの政党連合に分裂して選挙に参加した。前回選挙では、平和社会運動(MSP)、ナフダ、国民改革運動(イスラーハ)が「緑のアルジェリア連合」を結成して47議席を獲得したが、今回、2つに分裂した連合は合計で48議席となり(イスラーハを合わせると49議席)、前回とそれほど大差ない結果となった。

(研究員 金谷 美紗)

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