中東かわら版

№13 パレスチナ:ハマースがファタハとの政治対話を拒否

 4月17日、ガザのハマースは、近く再開する予定だったファタハとの政治対話を中止すると発表した。翌18日には、ハマースのハリール・ハイヤ政治局次長が、アッバース大統領の脅しに屈することはないと述べた。ハイヤ政治局次長が脅しと批判したのは、パレスチナ自治政府(PA)のガザに対する財政的圧力ではないかといわれている。

 4月4日、PAは、財政難を理由にガザのパレスチナ自治政府系公務員5万人に対して3月分の給与の3割カットを行なった。西岸のPA公務員への給与カットは行なわれていない。PAは、2007年にハマースがガザ統治を開始した後、ガザに住むPA系公務員に対してハマースが支配する役所で仕事をしないよう指示したが、給与の支払いは継続していた。PAは、ガザのPA系公務員に対する3月分給与のカットは一時的な措置だとしている。さらに4月12日、バハレーンを訪問していたアッバース大統領は、ガザに対する前例のない措置を取る可能性があると述べた。大統領自身は、具体的な内容に言及していない。

評価

 アッバース大統領は、ハマースに財政的な圧力をかけてでも政治対話を進めようとしているのかもしれない。報道によれば、パレスチナ自治政府はハマースが統治するガザに対して2007年から現在まで約170億ドルを支給してきた。西岸の自治政府が、ガザに住むPA系公務員への給与送金やハマース政府への予算送金を縮小した場合、その経済的な影響は極めて深刻になる。PA系公務員が失業した場合、現在約40%台の失業率が60%台に増加するとの予測もある。ただガザのハマースに経済的圧力をかけて、ハマースに政策変更を迫る方法は機能しないことがすでに証明されている。ハマースは、ガザ住民の生活が困窮することは、統治者である自分たちの責任だとは考えていないようだ。ハマースは、ガザの政治的、経済的孤立を脱却するために自分たちの政策を変えることなく、住民に終わりが見えない困窮生活を強いている。西岸のパレスチナ自治政府が、ガザに対する財政的な圧力を強化した場合、ハマースに対する効果はないとしても住民の忍耐が限界を越えるかもしれない。確かなことは、ハマースが大きな政策の転換を自ら行うか、あるいは何らかの方法でガザのハマース統治を終焉させない限り、ガザの孤立が続き、住民の困窮状況は変わらないことである。

 

(中島主席研究員 中島 勇)

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