中東かわら版

№6 モロッコ:サアドッディーン・ウスマーニー内閣の成立

 4月5日、ムハンマド6世国王は、ウスマーニー首相候補の提出した閣僚リストを承認し、ウスマーニー内閣が成立した。大臣26名、大臣付き書記13名から構成される。閣僚リストは以下のとおり(大臣付き書記は省略)。

  • 黒字:新任
  • 政党略称:PJD=公正開発党、RNI=独立国民連合、PPS=進歩社会主義党、USFP=人民勢力社会主義同盟、UC=立憲同盟、MP=人民運動

1

首相

サアドッディーン・ウスマーニー

PJD;元外務・協力相

2

人権担当国務大臣

ムスタファー・ラミード

PJD;前法相

3

内相

アブドルワーフィー・ラフティート

前ラバト・サレ・ケニトラ地方知事

4

外務・国際協力相

ナーシル・ブーリータ

前外務・国際協力相付き書記

5

法務・自由相

ムハンマド・アウジャール

RNI;元人権相(1998-2007)

6

ワクフ・イスラーム問題相

アフマド・タウフィーク

 

7

内閣官房長官

ムハンマド・ハジュウィー

元首相付き書記(2000-2012)

8

経済・財務相

ムハンマド・ブーサイード

RNI

9

農業・漁業・地方開発・水・森林相

アジーズ・アフヌーシュ

RNI党首

10

国土計画・建設・住宅・都市政策相

ムハンマド・ナビール・ベンアブドッラー

PPS党首

11

国民教育・職業訓練・高等教育・科学研究相

ムハンマド・ハサード

前内相

12

産業・投資・貿易・デジタル経済相

ムーラーイ・ハフィーズ・アラミー

RNI

13

設備・運輸・物流・水相

アブドルカーディル・アウマーラ

PJD;前エネルギー・鉱業・水・環境相

14

保健相

フサイン・ワルディー

PPS

15

エネルギー・鉱業・持続可能開発相

アジーズ・ラッバーフ

PJD;前設備・運輸相

16

観光・空運・手工業・社会経済相

ムハンマド・サージド

UC党首

17

青年・スポーツ相

ラシード・タールビー・アラミー

RNI;前下院議長

18

文化・通信相

ムハンマド・アウラジュ(ラアラジュ)

MP

19

家族・連帯・平等・社会開発相

バシーマ・ハッカーウィー

PJD;女性

20

雇用・職業統合相

ムハンマド・ヤティーム

PJD

21

首相付き大臣国防担当

アブドルラティーフ・ラウディイー

 

22

首相付き大臣総務・統治担当

ラフサン・ダーウディー

PJD;前高等教育・科学研究相

23

首相付き大臣議会・市民社会関係担当、内閣報道官

ムスタファー・ハルフィー

PJD;前通信相兼政府報道官

24

首相付き大臣行政改革・公務員担当

ムハンマド・ベン・アブドルカーディル

USFP

25

外相付き大臣在外モロッコ人・移住問題担当

アブドルカリーム・ベン・アティーク

USFP

26

内相付き大臣

ヌールッディーン・ブータイイブ

 

 

評価

 2016年10月の選挙から6カ月を経て、ようやく連立内閣が成立した。ベン・キーラーン首相の組閣交渉が失敗したため、国王が新たに首相に指名したウスマーニーは、組閣交渉で対立を続けた政党をひとまずすべて閣内に入れ、閣僚ポストを配分した。第一党のPJDは最も多くのポストを獲得したものの、組閣交渉中にPJDと対立しつづけたRNIが内政や開発政策における戦略的ポストを獲得した。内相、外相は官僚出身者が就任した。

 組閣後すぐに、連立与党の内部から不満の声が出ている。PJD内部では、何らかの圧力の結果このような不公平な閣僚配分が行われたという不満が表れており、またUSFPもPJDは社会を支配しようとする考えをもつ妨害主義的政党であると批判している。今後、連立内でPJDとそれ以外の政党との対立が続く場合、連立政権の運営や政策実施に支障が出ることが予想される。また、政治はますます国民から遠い営為となり、政治への不信感が蓄積されていくだろう。

(研究員 金谷 美紗)

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