中東かわら版

№182 チュニジア:内閣改造(シャーヒド第2次内閣)

 2月25日、シャーヒド首相は閣僚3名の任命をともなう小規模な内閣改造を行った。新閣僚は以下の通り。

 

宗教問題相

アフマド・アズーム

元国有財産相(2011);裁判官

公務員・行政相

ハリール・ガリヤーニー

チュニジア工業商業手工業連盟(UTICA)執行局委員

貿易担当国務相

アブドゥルラティーフ・ハンマーム

前チュニジア観光庁長官

  

評価

 今回の内閣改造は、2016年11月以来、空席となっていた宗教問題相(法相が暫定的に兼任していた)や、2月24日に公務員・行政相の辞任を表明したアビード・ブリーキーのポストを埋めるための人事である。

 アブドゥルジャリール・ベン・サーリム前宗教問題相は、2016年11月、議会の人権・自由・対外関係委員会の公聴会で、紛争や急進主義・テロリズムの台頭の原因はワッハーブ派であり、(駐チュニジア)サウジ大使にこの点につき改革を要求したと述べ、これが原因でシャーヒド首相に解任された。通常、宗教問題相にはザイトゥーナやムフティーなど宗教関連の経歴をもつ人物が任命されるが、後任のアフマド・アズームは裁判官出身者であることが目新しい。このことは、現政権がイスラーム急進主義とサウジアラビアを関連付けることに外交上慎重であることを示している。

 公務員・行政相については、内閣改造が行われた前日の24日にアビード・ブリーキーが、政労使の協調に基づき社会経済改革を推進することを記した「カルタゴ合意」(2016年7月)を現内閣は遵守していないことを理由に辞意を表明していた。特に昨年末に政府とチュニジア労働総連盟(UGTT)が行った公務員給与に関する交渉で、政府が公務員の賃上げ凍結を主張したため、政府とUGTTとの間に溝が生じていた。また新大臣ハリール・ガリヤーニーの任命については、ブリーキー前大臣が正式に辞任を表明する前に決定されたこと、また諸政党との協議もなかったことが問題となっている。ブリーキー前大臣はUGTT出身者だったが、ガリヤーニー新大臣は経営者団体のチュニジア工業商業手工業連盟(UTICA)の出身である。これまで政府は民主化にせよ経済問題にせよ関係諸派との合意形成を重視してきたが、今後は公務員改革において労組の抵抗を押さえ、賃上げの凍結や人員削減を推進していく方針であるとも読めるだろう。

(研究員 金谷 美紗)

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