中東かわら版

№136 GCC:英国との戦略的パートナーシップを開始

 英国のメイ首相は12月6日から7日にバハレーンで開かれたGCCサミットに出席した。英国の首相がGCCサミットに出席するのは初めてのこと。会合後には共同コミュニケが発出され、両者は新たに戦略的パートナーシップを開始することで合意したことが明らかにされた。

 会合においてメイ首相は「湾岸の安全保障は我々の安全保障だ」と述べ、英国とGCCが、シリアやイラク、リビア、イエメン、中東和平問題といった地域紛争への対処、「イスラーム国」を含む暴力的過激主義の撲滅、イランによる不安定化を招く行動への対抗で協調していくことを確認した。また、経済面では、英国はEU離脱に備え、今まで以上にGCCとの経済関係の強化を望んでいると表明した。

評価

 近年、英国は湾岸地域でのプレゼンスを拡大してきた。2014年12月にはバハレーンに英国の海軍基地を建設することで合意し(詳細は「バハレーン:英国海軍の恒久基地受け入れを決定」『中東かわら版』No.200(2014年12月8日))、2015年10月に着工、2016年11月には建設計画のフェーズ1が完了している。また、陸軍の恒久的なプレゼンス確保のため、オマーンに地域のハブとなる陸軍訓練施設の建設を進めようとしている。今回の訪問でメイ首相はバハレーンに停泊中の英ヘリ空母HMS Oceanに乗船し、湾岸地域で活動する英国海軍の役割を称賛する演説を行ったが、この中でも「湾岸の安全保障は我々の安全保障だ」というフレーズが繰り返し用いられた。

 GCC側にとっても、米国との同盟関係が不安定化するなか、パートナーシップの提携先が多様化することは望ましいことであり、英国との関係強化を積極的に進めていくことが模索されてきた。特に、対イランとの関係において、英国がイランの行動を名指しで批判する立場に立ったことは、GCC諸国にとっては外交上の得点であろう。また、シリア紛争の関連では、アサド大統領に正統性がなく将来の政治的役割を否定したこと、アサドの支援者であるロシアとイランに暴力の停止を呼びかけるという従来の路線も改めて確認した。

 しかしながら、こうした地域紛争への対処についてGCCと英国は原則論では一致するものの、情勢に影響を与えうるような行動に移ることはないだろう。今回の共同声明においても、両者間の防衛交流やワーキング・グループの設置といった関係強化については具体的な行動計画が明らかにされたものの、地域紛争については「批判」や「呼びかけ」といった純外交的な対応にとどまった。GCC・英国関係が深化する方向で動いていることは間違いないが、これがGCC・米国関係を代替したり、新たな軸を形成したりする可能性は低い。

(村上研究員)

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