中東かわら版

№70 トルコ:国軍によるクーデターの発生(2)

 7月15日(金)22時頃から突如発生した国軍の一部によるクーデターの試みはわずか12時間で鎮圧される結果に終わった。このクーデター未遂により反乱軍側100名以上を含む290名以上が死亡、1500名近い負傷者が出ている。

 18日に会見したビナル・ユルドゥルム首相は「これまでに、クーデター未遂に関与した疑いで7,543名を拘束しているが、この数字は変わる可能性がある。この中には警察官100名、兵士6,038名、司法関係者(裁判官および検察官)755名、民間人650名が含まれている」と述べた。

 国営のアナトリア通信は、トルコ当局は、これまでにクーデターに関与したとみられる、公務員約9,000名(警察官7,899名、県知事1名、市町村長29人を含む計8,777名)を解任したと報じた。

 また、『Hurriyet』紙は、トルコ政府が今回のクーデターの黒幕と糾弾するギュレン師の引き渡しを巡り、トルコ・米の高官協議が今週中にワシントンD.C.で行われる予定であると報じている。米国側は、ギュレン師が今般の事件に関わったとする明確な証拠がない限り同氏の引渡しには応じない姿勢を見せている。

 

評価

 このクーデターが未遂に終わった要因は大きく二つあると考えられる。一つは全軍による武装蜂起ではなかったこと、もう一つは軍の行動に対する国民の支持が得られなかったことである。

 トルコは1923年の共和国建国以来、これまでに軍事クーデターを3度経験している(うち1度は書簡によるもの)。軍が大規模に展開したのは1960年と1980年の2回だが、いずれも陸海空の3軍全てがクーデターに関与し成功している。それに対し今回の「反乱」は全軍ではなく一部のみであった。事実、陸海空3軍のトップであるフルシ・アカル参謀総長はクーデター発生直後に反乱軍によって身柄を拘束されていた。

 二つ目は、武力による政権交代を多くのトルコ国民が是としなかったことである。トルコ国内ではここ数年、「イスラーム国」やクルディスタン労働者党(PKK)によるテロ行為が断続的に発生しているものの、最後の軍事クーデターから40年近くが経過し混乱期にあったかつてのトルコとは大きく異なる。現場からの映像を見る限り、エルドアン大統領の呼びかけに応じて軍を止めようとした人々とともに、反エルドアンではあるけれど武力行使に反対する人々も多く街頭に繰り出していたように見受けられる。これまで国民にとって尊敬の対象であった国軍は、今回の騒動によって自らその権威を失墜させてしまったとも言えるだろう。エルドアン大統領にとっては、これまで「目の上のこぶ」だった軍・法曹界・公務員等様々な分野で影響力を保持するとされるギュレン派を一掃する絶好の口実を与える格好となってしまった。念願の大統領権限強化へ向け、反乱分子に対する更なる締め付けが予想される。

(金子研究員)

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