中東かわら版

№26 アフガニスタン:米軍がターリバーンの指導者マンスール師を殺害か

 5月21日、米国防総省は、ターリバーンの指導者マンスール師を標的とした攻撃を実施したと発表した。攻撃した場所は、パキスタン西部のバローチスターン州で、複数の無人機でマンスール師が乗る車を攻撃し、車に乗っていた2人が死亡したとした。その後23日、ホワイトハウスはマンスール師を殺害したと発表した。同発表で、オバマ大統領は、マンスール師はアフガニスタン政府の真剣な和平の呼びかけを拒否していたため攻撃したと説明した。マンスール師への攻撃は、オバマ大統領が数週間前に承認していたと報道されている。報道(22日)では、パキスタンは、同攻撃で2人が死亡したことを確認したが、それがマンスール師であるかどうかは確認していない。一方、アフガニスタンの諜報機関「国家治安局」(NDS)は、マンスール師が死亡したとしている(22日)。ターリバーン筋が、マンスール師は、攻撃の時にバローチスターン州にいなかったと発言したとの報道があるが、指導者の死亡を確認あるいは否定するターリバーンからの公式発表はない。『ロイター』(22日)は、ターリバーン筋の話として、すでに幹部が集まり、次期指導者選出の協議を開始したと報道している。

 

評価

 米国の無人機による攻撃によって特定の人物が死亡したかどうかの確認は難しく、米国はマンスール師が死亡したとしているが、当面は、ターリバーンの公式発表を待つしかない。米『NYT』紙(22日)は、米国がマンスール師を殺害したかどうかより、米国がパキスタンとアフガニスタンの国境地帯バローチスターン州で初めて無人機によるターリバーン指導部への攻撃を実施したことは、米国のターリバーン政策変更を示唆している点のほうが重要であると報道している。マンスール師は、アフガニスタン政府との和平交渉には前向きではないといわれていた。23日のホワイトハウス発表を見る限り、米国は、同師が指導者である限り、ターリバーンが和平交渉に出てこないと判断したようだ。他方、現指導者を殺害したとしても、ターリバーンの次期指導者が和平交渉に前向きである保証はない。

(中島主席研究員 中島 勇)

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