中東かわら版

№24 シリア:シリア人の臓器買い取りが横行

 2016年5月13日付のインターネットサイトNews Deeply(イギリス、アメリカなどの慈善団体、人権団体から支援を受けるニュースサイト)は、シリア人から臓器を買い取る活動が横行していると報じた。これによると、トルコ、イラク、レバノンのようなシリアに隣接する諸国、シリア国内ではイドリブ県、アレッポ県郊外のようなシリア政府の統制外の地域の国境地帯で特に臓器の買い取りが横行している。

 また、この記事によるとシリアでは「臓器の提供」を合法的にすることは可能だが、ダマスカス市内でも買い取り目的であるかのような「提供呼びかけ」の張り紙が多数見られる。こうした事態に対し、シリア政府の官憲は人員不足や治安状況の悪化のため効率的な取り締まりや訴追ができていない。

 

評価

 紛争地や避難先でのシリア人に対する虐待と搾取、或いは「イスラーム国」などの犯罪集団による臓器売買についてはかねてから情報があったが、今般の記事はより具体的に部位や地域によって買い取り価格が異なるなどの情報を含む。例えば、腎臓についてはトルコでは1万ドル、イラクでは1000ドル未満、シリアやレバノンでは3000ドル程度などである。また、「イスラーム国」が占拠している地域だけでなく「反体制派」の占拠地域であるイドリブ県も臓器買い取りが特に横行している地域として上げられており、現在の情勢は一般のシリア人にとっては戦禍、虐待、搾取に他ならないことを示している。なお、記事で取材を受けた人権活動家は、臓器買い取りが横行する原因として難民受入国がシリア人の就労を認めず彼らが困窮しているからである主張したが、臓器の買い取りに限らず受入国側にシリア人を虐待・搾取する対象として扱う風潮があることこそが最大の問題であろう。

(主席研究員 髙岡 豊)

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