中東かわら版

№6 リビア:国民合意政府のトリポリ入り

 リビア政治合意(2015年12月署名)に基づく統一政府「国民合意政府」(Government of National Accord; GNA)が2月に結成されていたが、東部の代表議会はGNAの承認決議を何度も延期し、西部トリポリ政府や民兵組織はGNAが首都トリポリに拠点を置くことを拒み、GNAはチュニスに留まらざるをえない状態が続いていた。

 しかし3月30日、ついにGNAの執行評議会(首相・副首相などから成るGNAの執行権力機関)がチュニスから海路でトリポリに到着した。トリポリ政府はGNAのトリポリ入り前に民兵組織に非常事態に備えるよう通達を出していたため暴力的事態への発展が懸念されたが、西部諸勢力は態度を変え、次々にGNAへの支持を表明した。しかし、トリポリ政府はGNAの承認を発表した翌日に再び反対姿勢に転じ、統一政府成立の試みは相変わらず不透明なままとなっている。

(3月後半から4月6日までのGNAをめぐる出来事の推移は、文末の表を参照)

評価

 トリポリ政府はGNA反対から賛成へと転換した後に再び反対に変わり、トリポリ政府を支持する西部各都市の地方評議会や部族も、GNAのトリポリ入り直後にGNA支持に態度を変化させた。なぜ賛成に転じたのかは不明だが、グワイル首相率いるトリポリ政府が一度は放棄を宣言した行政権を再び主張したのは、GNA反対強硬派のアブー・サフマイン国民議会議長の影響があると思われる。

 東部がGNAに反対する理由は、国連の仲介で結成されたGNAが今後の国軍再編において、東部民兵組織を統率するハリーファ・ハフタルを排除する可能性があり、そうなれば統一政府下で東部勢力が劣勢に置かれる見通しとなるためである。そのため、代表議会内の反GNA勢力はGNA承認審議を妨害しているようである。

 したがって、GNAは、リビア政治合意で定められた代表議会による承認を済ませないまま、トリポリで統一政府行政を開始していることになる。にもかかわらず、国連やEU、チュニジアやアルジェリアなど周辺国は、GNAのトリポリ入りを「リビア統一の重要な一歩」と歓迎し、GNAの始動を肯定的に評価した。リビアの全勢力が合意に到達できる条件は存在しないと理解しているため、GNAを既成事実化することがリビアの安定化にとって最善と判断したとみられる。しかし、東西両政府がGNAを認めず、GNA成立に係る手続き的問題を抱えたまま統一政府がリビアに存在する現在の状況は、対立する勢力どうしが互いを批判する口実を提供しかねず、停戦と政治的統一の実現をいっそう遠ざける可能性がある。

(金谷研究員)

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