№167 UAE:内閣改造
- 2016アラブ首長国連邦湾岸・アラビア半島地域
- 公開日:2016/02/12
2月10日、ムハンマド・ラーシド副大統領兼首相は内閣改造を発表した。2月8日には省庁の再編が発表されており(詳細は以下を参照「UAE:省庁再編」『中東かわら版』No.166(2016年2月10日))、それに伴う人事異動となる。内閣改造の結果、8人の閣僚が新たに任命され、そのうち5人が女性であった。概要は以下のとおり。
1 |
首相兼国防相 |
ムハンマド・ラーシド・アール=マクトゥーム |
副大統領;ドバイ首長 |
2 |
副首相兼内相 |
サイフ・ザーイド・アール=ナヒヤーン |
アブダビ首長家;中将 |
3 |
副首相兼大統領府担当相 |
マンスール・ザーイド・アール=ナヒヤーン |
アブダビ首長家 |
4 |
財務相 |
ハムダーン・ラーシド・アール=マクトゥーム |
ドバイ首長家 |
5 |
外務・国際協力相 |
アブドゥッラー・ザーイド・アール=ナヒヤーン |
アブダビ首長家 |
6 |
文化・知識開発相 |
ナヒヤーン・ムバーラク・アール=ナヒヤーン |
アブダビ首長家 |
7 |
寛容担当国務相 |
ルブナー・ハーリド・カーシミー |
シャルジャ首長家;女性;開発・国際協力相(2013-2016) |
8 |
内閣担当・未来相 |
ムハンマド・アブドゥッラー・ガルガーウィー |
|
9 |
経済相 |
スルターン・サイード・マンスーリー |
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10 |
保健・社会予防相 |
アブドゥルラフマーン・ムハンマド・ウワイス |
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11 |
人的資源・自国民化相 |
サクル・グバーシュ・サイード・グバーシュ |
労働相(2008-2016) |
12 |
外務担当国務相 |
アンワル・ムハンマド・ガルガーシュ |
博士 |
13 |
財務担当国務相 |
ウバイド・フマイド・ターイル |
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14 |
国際協力担当国務相 |
リーム・イブラーヒーム・ハーシミー |
女性;国務相(2008-2016) |
15 |
エネルギー相 |
スハイル・ムハンマド・ファラジュ・マズルーイー |
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16 |
教育相 |
フサイン・イブラーヒーム・ハマーディー |
|
17 |
インフラ開発相 |
アブドゥッラー・ムハンマド・ベルハイフ・ヌアイミー |
博士 |
18 |
司法相 |
スルターン・サイード・バーディー |
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19 |
地域社会開発相 |
ナジュラー・ムハンマド・アワル |
女性;内閣担当省閣僚評議会事務局長 |
20 |
国防担当国務相 |
ムハンマド・アフマド・ブワールディー |
国防省次官 |
21 |
気候変動・環境相 |
サーニー・アフマド・ジユーディー |
博士;IRENA常駐代表 |
22 |
一般教育担当国務相 |
ジャミーラ・サーリム・ムハイリー |
女性;ドバイ知識・人間開発庁学校監査部長 |
23 |
高等教育担当国務相 |
アフマド・アブドゥッラー・フマイド・ベルフール・ファラーシー |
博士;マスダル社CEO |
24 |
国務相 |
スルターン・アフマド・ジャービル |
博士 |
25 |
国務相 |
マイサー・サーリム・シャームシー |
博士;女性 |
26 |
国務相 |
ラーシド・アフマド・ファハド |
博士;環境・水相(2008-2016) |
27 |
幸福担当国務相 |
ウフード・ハルファーン・ルーミー |
女性;内閣担当省首相室長 |
28 |
連邦国民議会担当国務相 |
ヌーラ・ムハンマド・カアビー |
女性;元連邦国民議会議員 |
29 |
若者担当国務相 |
シャンマー・スハイル・ファーリス・マズルーイー |
女性 |
評価
省庁再編に伴う今回の内閣改造では、若者、特に女性の登用が進んだことが大きな注目を集めている。新任の大臣8人の平均年齢は38歳であり、オックスフォード大で修士号を取得したシャンマー・マズルーイー若者担当国務相は最年少となる22歳であった。開発・国際協力省が外務省に統合されたことにより、UAEで初の女性閣僚であったルブナー開発・国際協力相は、新設の寛容担当国務相に横滑りした。事実上の後任となる外務省の国務相ポストとなった国際協力担当国務相には、2008年から無任所の国務相を務めていたリーム・ハーシミーが就任している。この結果、29人の閣僚中8人が女性となり、女性の閣僚率は27.6%と、世界平均の17%を大きく上回り、世界でも第27位前後の位置づけとなる(IPU and UNWOMEN, Women in Politics: 2015, 2015年1月現在との比較)。
こうしたイメージの刷新の一方、閣内におけるムハンマド・ラーシド首相の影響力が拡大している傾向も見られる。省庁再編により教育省と高等教育省が統合されたことでハムダーン・ムバーラク・アール=ナヒヤーン高等教育相が更迭されたが、この結果、アブダビ首長家の閣僚ポストは純減することになった。また、自身の腹心であるガルガーウィーを置く内閣担当(・未来)省から、省内のNo.2であった二人の高官をそれぞれ地域社会開発相、幸福担当国務相に登用している。2014年1月以降ハリーファ大統領不在が常態化するなか、副大統領兼首相であるドバイ首長の力が強まっている兆候の可能性もあろう。
(研究員 村上 拓哉)
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