中東かわら版

№166 UAE:省庁再編

 2月8日、ムハンマド・ラーシド副大統領兼首相は、省庁の再編についてハリーファ大統領の承認が下りたとし、その概要について自身のTwitter経由で発表した。同副大統領は、今次の省庁再編はUAE史上最大の構造変化であり、ムハンマド・ザーイド皇太子と協議の下、同決定がなされたと述べている。再編の結果、省庁の数は減少するものの、大臣の数は増加した。概要は以下のとおり。なお、省庁再編に伴う人事については発表されていない。

 

教育

・教育省と高等教育省を統合し、国務相ポストを2つ設置

・公立学校の運営を担う学校機構の設置

・教育・人的資源高等評議会の設置

 

保健

・保健省を保健・社会予防省に改称

・公立病院を監督する独立した機構を設置

 

労働・社会

・労働省を人的資源・自国民化省に改称

・結婚基金を社会問題省に統合し、保育園の管轄を教育省に移動

・社会問題省を地域社会開発省に改称

・社会善、満足を創出する政府の政策を促進する幸福担当国務相ポストの新設

・社会にとって基盤的な価値観となる寛容性を促進するため寛容担当国務相ポストの新設

・22歳以下の女性が国務相として率いる若者評議会の設立

 

科学・環境

・文化省を文化・知識開発省に改称し、地域社会開発部門の管轄を地域社会開発省に移動

・環境・水省を気候変動・環境省に改称

・科学者評議会の設立

 

経済

・国家観光評議会を経済省に併合

 

外交

・開発・国際協力省を外務省に併合し、外務・国際協力省に改称、国務相ポストを2つ設置

 

政府

・内閣担当省を内閣担当・未来省に改称

 

 

評価

 今回の省庁再編はTwitter経由で発表されるという異例の形式であり、これらの省庁再編に伴う法的な手続きがとられているのかは不明であるが、UAE国内では既成事実として報じられている。人事異動については発表されていないことから、近日中に新たな人事とともに正式な発表がなされるであろう。

 ムハンマド・ラーシド副大統領兼首相が述べたように、今回の再編は広範な分野に渡った大規模なものであった。各分野において時代の変遷とともに政府が取り組むべき課題が変化してきており、こうした変化に対応するための措置としては肯定的に評価できよう。例えば保健省が保健・社会予防(wiqāya al-mujtami’)省に改称されたのは、国民の健康増進のため疾病等の予防を目指す予防医学を強化することを目指すものである。もっとも、幸福担当国務相ポスト、寛容担当国務相ポストの新設や、「石油後の時代」の戦略を検討するため内閣担当省の内閣担当・未来省への改称など、具体的にどのような業務を担うのか不明なものも多い。今次改革が如何にして実効性を担保していくのかについては、今後の政府の対応ぶりを注視していく必要がある。

(研究員 村上 拓哉)

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