中東かわら版

№159 リビア:国民合意内閣の閣僚リスト発表

 1月19日、執行評議会(Presidential Council)は、リビア政治合意(2015年12月17日)に基づき国民合意内閣(Government of National Accord; GNA)の閣僚32人を発表した。執行評議会とは、統一内閣GNAの中核を担う首相・副首相など9名の閣僚から構成される(2015年12月22日付『中東かわら版』No.143を参照)。政治合意によれば、GNA閣僚が発表されてから10日以内に代表議会は内閣の承認を行わなければならない。

 マルティン・コブラーUNSMIL特使、ファーイズ・サッラージュGNA首相候補が、トリポリとトブルクの各首脳や、各地の地方評議会、部族長などと折衝を重ね、東部・西部・南部出身者の代表を重視して閣僚を決定した模様であるが、早くもGNA成立への懸念が見え隠れしている。

1

国防相

マフディー・イブラーヒーム・バルガシー

ベンガジ出身;尊厳作戦第204戦車部隊司令官

2

法務相

アブドゥルサラーム・ムハンマド・ジュナイディー

 

3

内務相

アーリフ・サーリフ・フージャ

元内務相(2014)

4

外務相

マルワーン・アリー・アブー・スライウィール

 

5

財務相

ターヒル・ムハンマド・サルカズ

元経済相(2011)

6

地方行政相

ビダード・ガンスー・マスウード

 

7

保健相

ムハンマド・スライマーン・ブーズガイヤ

 

8

教育相

ハイル・ミーラード・アブー・バクル

 

9

高等教育・科学研究相

ムハンマド・ジュムア・アウジャリー

通信会社社長

10

経済相

アブドゥルマトルーブ・アフマド・ブーファルワ

ウマル・ムフタール大学学長(ベイダ)

11

計画相

ハーリド・ムフターフ・アブドゥルカーディル

 

12

国際協力相

マフムード・ファルジュ・マフジューブ

 

13

通信相

アーティフ・ミールード・バフリー

 

14

運輸相

ヒシャーム・アブドッラー・アブー・シュキワート

 

15

工業相

ファルジュ・ターヒル・サヌーシー

 

16

石油相

ハリーファ・ファルジュ・アブドゥルサーディク

 

17

電気相

ウサーマ・サアド・ハマード

 

18

農業相

アーディル・ムハンマド・スルターン

 

19

労働相

カーディー・マンスール・シャーフィイー

 

20

職業訓練相

ムフタール・アブドッラー・アジュワイリー

 

21

社会問題相

アフマド・ハリーファ・ブリーダーン

 

22

水資源相

ウサーマ・ムハンマド・アブドゥルハーディー

 

23

住宅・公共施設相

アリー・カルスー・アルディー

 

24

青年・スポーツ相

ヌールッディーン・アフマド・トリーキー

 

25

文化相

アスマー・ムスタファー・ウスター

女性

26

ワクフ・イスラーム問題相

ムハンマド・アフマド・ワリード

 

27

航空・空輸相

サイード・ムハンマド・ディーブ

 

28

国民和解相

ユースフ・アブーバクル・ジャラーラ

 

29

情報相

ハーリド・アブドゥルハリーム・ナジュム

 

30

アラブ・アフリカ問題相

ナスル・サーリム・ムハンマド

 

31

議会問題担当国務相

サイード・アフマド・マルガニー

 

32

人権・難民担当国務相

サーリフ・ガッザール・ジャナーブ

 

 

評価

 12月17日にモロッコで署名されたリビア政治合意では、署名から1カ月以内に閣僚リストを発表することになっており、執行評議会は2日遅れでこれを発表した。しかし、GNAの承認についてすでに不安点が現れてきた。

 東部の代表議会の有力議員によれば、代表議会及び東部地域はGNAの構成を支持していないという。また、執行評議会のアリー・ガトラニー副首相は、マフディー・イブラーヒーム・バルガシーの国防相への任命に反対し、GNA閣僚リストに署名しなかった。「リビア国民軍」(代表議会を支持する国軍・民兵組織)の中での権力争いが関係しているようである。

 また、閣僚に任命された人物には政治経験が不明な者や名前が知られていない者が多く、任期が1年という短い期間であるとはいえ、紛争停止や憲法作成という重要な任務を達成できるのかという不安も残る。リストが発表されてから自身が任命されたことを知った人物や、なぜ自身が選ばれたのか理解できないとコメントした人物もいる。

 したがって、GNAが承認されるかどうかという懸念に加え、たとえ何度かの再組閣を経てGNAが成立したとしても、民兵組織内部の権力争いにGNAが振り回される可能性が極めて高くなることも考えられる。

(研究員 金谷 美紗)

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