中東かわら版

№143 リビア:国民議会・代表議会代表団が政治合意に署名

 12月17日、国民議会と代表議会の各代表団はモロッコで、10月8日の政治合意案(2015年10月29日付『中東かわら版』No.111を参照)の修正版に合意し、署名した。10月にレオン前UNSMIL特使が提示した国民合意政府案の「執行評議会」について、国民議会・代表議会の両方が東・西・南部のバランスのとれた代表を要求したため、新たに東部から1人、南部から2人が選ばれた。以下は、17日に合意された「執行評議会」候補者である。これは後に両議会で承認される必要がある。

 署名式には、国民議会・代表議会の各代表団数十名をはじめ、マルティン・コブラー新UNSMIL特使、諸外国外相、地域組織代表者などが参加して合意を祝福し、国民合意政府の速やかな成立とリビアの統一を呼びかけた。

 しかし、今回の合意も東西両陣営の完全な支持を得ていない。国民議会のアブー・サフマイン議長と代表議会のアギーラ・サーリフ議長は、国民合意政府案は外国勢力の介入の結果であるとして政治合意への反対を表明している。両議長は、国連の仲介を経ない独自の試みで両議会代表団(国連仲介の政治対話に参加する代表団とは別のメンバー)の直接対話を行い、5日、挙国一致内閣の結成で原則合意した。こうした動きに対して、国民合意政府を支持する代表議会代表団は、サーリフ議長の行動は代表議会の多数派の意見を反映しておらず、同議長の不信任決議も検討すると批判を返している。

 

【12月17日に合意された国民合意内閣「執行評議会」候補者】※青色が新たに任命された人物。

 

 

評価

 10月の政治合意の失敗後、国民議会・代表議会それぞれは合意賛成派と反対派に分裂し、賛成派は独自に合意賛成の声明を発表したり、反対派は両議会の議長を中心に独自の和平案を発表したりと、全くまとまりのない状況が続いている。しかし、国際社会は国連(UNSMIL)主導の和平対話が正統な危機解決の道と見なしているため、反対派の試みを退け、賛成派のみをモロッコに集結させ今回の合意に至った。したがって、今回の合意も再び、7月の合意のように東西政治エリートすべてが参加した合意ではなく、必然的に合意履行に不安定さを抱えている。加えて、現場で果てしなく続く戦闘をいかに停止するのかという課題も、全く不透明なままである。仮に、東西の議会で国民合意政府の閣僚リストが承認されたとしても、政治エリート、戦場の両レベルにおいて紛争が中長期的に続くことは確実であろう。 

(研究員 金谷 美紗)

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