中東かわら版

№142 チュニジア:チュニジアの呼びかけ党の党内不和

 チュニジア議会で第1党のチュニジアの呼びかけ党(二ダー・トゥーニス)において指導部対立が深刻化し、同党の一部議員が議会会派から離脱すると言い出す事態になっている。離脱を表明している議員は32人で、もし実際に離脱すると同党の議席は53となり(現在85議席)、ナフダ党が第1党となる(現在69議席)。

 対立は、ムフセン・マルズーク幹事長を中心とするグループと、ハーフィズ・カーイド・シブシー党創設委員会委員(バージー・カーイド・シブシー大統領の息子)らとの間で起きている。前者は、ハーフィズらが党を非民主的方法で運営してきたことを批判し、さらにシブシー大統領が息子ハーフィズを党の後継指導者に据える意図があるとも指摘する。こうした批判をハーフィズらは否定している。

 指導部対立は11月に入って先鋭化した。11月1日、ハンマーマートで党会合が開かれた際、マルズーク派とハーフィズ派の支持者が乱闘となる騒ぎがあり、これをきっかけとして、マルズーク派の議員32人は、党改革の要求と議会会派からの離脱を発表した。実際には彼らはまだ会派内に留まっているようだが、シブシー大統領自らが党内和解を命じたり、マルズーク幹事長が役職の辞任を発表したりする事態となっている。

 

評価

 チュニジアの呼びかけ党の指導部対立は、同党創設者のバージー・カーイド・シブシーが大統領に就任し、憲法の規定上、党を離籍した直後に始まった。同党は、ベン・アリー時代の与党・立憲民主連合(RCD)の元党員や高官経験者、左派の労働組合出身者まで、異なる政治潮流の者が寄り集まって結成された党であり、党内の諸政治潮流をまとめあげていたのが創設者シブシーの指導力やカリスマであった。このため、シブシーが党を離れると、すぐに次期指導部争いが発生した。

 見かねたシブシー大統領が、党を離籍したにもかかわらず、党内和解のための委員会を設置するよう命じたが、この決定に対してもマルズーク派から大統領による党内事項の介入であるとの批判が噴出した。党内和解の委員会は1月10日までに結成される予定だが、マルズーク派は和解の姿勢を見せておらず、会派離脱や和解委員会への不参加をちらつかせることで、党指導部への影響力を得たい思惑が見える。

 このような内紛問題は、党の分裂や議会での第1党の座を失うという問題だけでなく、チュニジアの民主主義に関わる問題を提示している。政変後の移行政治におけるイスラーム主義勢力と世俗勢力の党派争いは、当時の与党であったナフダ党への支持率を低下させ、国民は2014年議会選挙でナフダではない政治勢力としてチュニジアの呼びかけ党に投票した。しかし、新たに与党となったチュニジアの呼びかけ党も、国民の利益の実現よりも党内権力闘争に腐心している状態では、国民の政治不信はますます広がり、政変後の政治経済を立て直す重要政策の実施も遅れてしまうだろう。そうなれば、民主化に成功したチュニジアで政治過程が不安定化する恐れも出てくる。

(金谷研究員)

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