中東かわら版

№132 アルジェリア:元DRSテロ対策部長に禁固5年判決

 11月26日、オラン県の軍事裁判所は非公開法廷にて、アブドゥルカーディル・アイト・ワアラービー元諜報治安局(DRS)テロ対策部長(通称ハッサーン将軍)に対し、武装組織結成、武器所持に関する虚偽報告、戦争に使用する武器の所持、軍命令への不服従の罪で、禁固5年を言い渡した。大統領とDRSの対立、大統領によるDRS弱体化の動きが進むなかで、初めてDRS幹部が有罪判決を受けたことになる。

 

 同人は、本年9月に解任されたムハンマド・メディエン前DRS長官に近い人物とされる。2013年末にブーテフリカ大統領が退役命令を下したが、本人がこれに反対したため、2014年2月に逮捕され、司法監視下に置かれていた。さらに本年8月27日には、武装組織結成、武器所持に関する虚偽報告などの容疑で逮捕され、ブリダ県軍刑務所に収監されていた。

 

評価

 DRS内のメディエン派幹部の更迭、メディエン長官本人の解任に続き、メディエン派幹部に実刑判決が下されたことは、ブーテフリカ大統領側からDRSに向けて、「アルジェリアの神」とも呼ばれたメディエンの影響力を徹底的に排除するという強いメッセージを送ったといえる。

 2013年に体調を崩してからほとんど公の場に現れず、稀に車椅子に乗って登場するだけの大統領について、野党やメディアは、大統領はもはや公務を遂行できる健康状態にないのではないかとの憶測を巡らせている。ブーテフリカ大統領亡き後の政治を誰が支配するのかというポスト・ブーテフリカ時代の模索や憶測が政界やメディアで飛び交うなか、大統領陣営は、メディエンではなくブーテフリカ大統領陣営がポスト・ブーテフリカ時代を作り上げるのだという意思と能力を示す必要がある。メディエン長官の更迭はまさにその強いメッセージを含んでいたが、今回の元DRS幹部への実刑判決も同様のメッセージを送るための新たな方法であったといえる。 

(研究員 金谷 美紗)

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