中東かわら版

№130 クウェイト:内閣改造の実施(石油相の異動)

 9月29日、サバーフ首長は勅令を発出し、小規模な内閣改造を実施した。内閣改造による閣僚の異動は以下のとおり。

 

・アナス・ハーリド・サーリフ副首相兼財務相 

  → 石油相代行を兼任

・アリー・サーリフ・ウマイル石油相兼国会担当国務相 

  → 公共事業相兼国会担当国務相に任命

・ムハンマド・アブドゥッラー・ムバーラク・サバーフ閣議担当国務相 

  → 電気・水相代行を兼任

・アフマド・ハーリド・アフマド・ジャサール公共事業相兼電気・水相 

  → 辞任

 

評価

 今次内閣改造は、ウマイル石油相の異動が決定されたことが大きな動きである。ウマイル石油相は、国営石油会社の経営陣と度々対立を繰り返してきた。同石油相はクウェート石油公社(KPC)の理事をCEOと相談することなく更迭したり、子会社のCEOを罷免したりする決定を下してきたのに対し、石油会社側は同相にそのような決定を下す権限はないと反発をしていた。こうした動きには一部の議員も同調し、本件を巡って石油相への喚問を要求する声が上がっていた。

 ウマイル石油相を公共事業相に異動させ、サーリフ副首相に代行として石油相を兼務させたことは、こうした騒動の幕引きを政府が図ったものと見られている。ジャサール公共事業相は、9月に汚職の罪で有罪判決が下ったことにより、辞任の意向を以前から表明していた。報道によるとウマイル石油相の各種行動は閣議を経て決定されたものであったため、政府としても同石油相を罷免するのではなく元々空席となる予定だったポストに異動させることで、同石油相の面目を保つことに配慮したものであろう。

 今回の内閣改造はこうした国内政治の文脈に基づくものであり、クウェイトの石油政策に何らかの変化がもたらされる可能性は低い。サーリフ副首相はあくまで代行であることから、いずれ新たに石油相が任命されることになるだろう。

(研究員 村上 拓哉)

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