中東かわら版

№57 イラン:核合意を承認する国連安保理決議が採択

 7月20日、国連の安全保障理事会は、7月14日にP5+1とイランとの間で成立した「包括的共同行動計画(JCPOA)」を承認する決議第2231号を全会一致で採択した。同決議の成立により、JCPOAは決議成立から90日後ないし双方の合意によりそれ以前に発効することになる。JCPOAが発効した後、双方はJCPOAで規定された各種措置の履行準備に取り掛かることになっており、欧米諸国は制裁解除ないし一時停止の実施準備を、イランはIAEAによる検証の受け入れを行う。IAEAによってイランが合意を遵守していることが確認された場合、双方はJCPOAの履行を開始し、国連安保理決議による核関連の対イラン制裁は解除され、EU・米国による制裁も解除・一時停止となる。

 

評価

 国連安保理決議が採択されたことで、早ければ年内から年明けにも核合意は履行される見込みである。履行に至るまでに生じうる手続き上の阻害要因としては、第一に米国議会の動向である。米国議会は7月20日からJCPOAに関する60日間の審査を開始する。共和党が過半数を占める議会では、上院・下院ともに合意反対派が多数派であるが、大統領の拒否権を覆すためには両院で3分の2以上が必要となる。3分の2以上の反対を確保するためには民主党議員の「造反」が必要となり、今後、議会内での政治工作が過熱するだろう。

 第二に、IAEAによる検証へのイランの対応である。JCPOAでは、イランは合意履行開始前においても自発的に核関連活動を制限することを受け入れており、これが適切に行われているかどうかをIAEAが確認することによって、合意の履行が開始される。これは既にP5+1との間で合意されていることとはいえ、実際の運用においては解釈をめぐって衝突が発生する懸念もある。また、イランは10月15日までに過去・現在の未解決の問題についてIAEAに報告することになっており、これを受け、IAEAは12月15日までに最終報告書を策定することになっているが、これらが期日通りに進められていくか注視しなければならないだろう。

(研究員 村上 拓哉)

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