中東かわら版

№42 バハレーン:ウィファーク指導者に懲役4年の判決

 6月16日、高等犯罪裁判所は、国内最大の政治団体であるウィファークの指導者、アリー・サルマーンに、扇動、法律の不遵守の呼びかけ、内務省への中傷の罪により、懲役4年の判決を下した。同指導者は昨年12月28日に同容疑により拘束され、審理にかけられていた。他方、暴力的手段による体制転換の容疑については棄却された。ウィファークは、同判決は法的な根拠を欠くものであり、政治的な動機に基づく不当なものであると批判した。

 

評価

 議会内の最大野党であったウィファークは、2011年の「アラブの春」に起因する暴動を契機として政府との対立を深めていた。国民対話を通じて政府との交渉を継続しており、2014年11月の議会選挙までに交渉がまとまることが期待されていたものの、合意の形成に失敗、ウィファークは同選挙をボイコットしていた(「バハレーン:11月22日予定の下院・地方議会選挙に野党はボイコットを表明」『中東かわら版』No.163(2014年10月21日)を参照)。他方、選挙の実施については、英米を始めとする諸外国から歓迎の声が寄せられ、2011年以降関係が冷え込んでいた欧米諸国との関係改善が示唆される動きがあった。

 このような諸外国の動向を反映したものであるかは不明であるが、12月のアリー・サルマーンの拘束は、政府としてウィファークの活動をより強硬に取り締まる意思を示したものであろう。拘束後、イランの外務省および宗教指導者が同措置を強く非難したが、米国務省は懸念の表明にとどまった。先のキャンプ・デービッド会合において、米国は「イスラーム国」対策、対イラン外交に関してGCC諸国との協力を強化していく意向を明らかにしており(「GCC:キャンプ・デービッドで米・GCC首脳会談」『中東かわら版』No.20(2015年5月15日)を参照)、そのなかにはGCCの加盟国であるバハレーンも含まれる。米国メディアの『BloombergView』が6月15日付で掲載した論考では、米国が2011年から継続しているバハレーンへの武器禁輸措置の解除に向けて動いていると指摘されており、人権団体によるバハレーン政府批判とは対照的に、欧米諸国は政府寄りの姿勢を顕わにしている。

 しかしながら、アリー・サルマーンの所属するウィファークを始めとする国内の反政府勢力は、今回の判決に対し、強い不満を抱いているだろう。12月の拘束時にも見られたような抗議活動が起きる可能性は高く、治安当局との衝突が発生する懸念がある。衝突の規模によっては、2011年のような全国的な暴動に至る恐れもあり、今後の治安情勢は流動化しよう。

(研究員 村上 拓哉)

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