中東かわら版

№21 イスラエル:ネタニヤフ第四次内閣の成立

 5月14日夜、ネタニヤフ第四次内閣が成立した。5月6日夜、組閣期限切れ直前に5党による連立内閣が合意された後、ネタニヤフ首相は、基本法で定められた閣僚数(18人)の増枠を求めた。国会は、閣僚枠増員について11日と13日に審議を行ない、13日に賛成61、反対59で同法案を可決した。ネタニヤフ首相は、閣僚数増加の法案が可決されるまでリクード議員の閣僚ポストを決めなかった。そのため同法案が成立した後から14日夜まで、リクード議員の間での閣僚ポストをめぐる協議が続いた。主要リクード議員の多くがネタニヤフ首相が提示したポストに不満を表明した模様で、人事に不満で国会で行なわれた新内閣成立のセレモニーを欠席した有力議員もいた。ネタニヤフ首相は、外相を兼任する。連立する政党の党首らでは、「ユダヤの家」のベネット党首が教育・ディアスポラ相に、クラヌのカハロン党首が財政相、シャスのデリ党首が経済相に就任している。

 

評価

 新内閣がようやく発足したが、最後の最後まで内部問題でのゴタゴタが続いた。空席の閣僚ポストがあり、最終的な内閣名簿が確定するまでには時間がかかりそうだ。ネタニヤフ首相は、外相ポストを空席にしておくことで、「シオニスト・ユニオン」のヘルツォグ党首との大連立の可能性を残したとする報道もある。イスラエル新政権は、当面は政権内の人事問題を含む内政問題に時間を費やすことになるかもしれない。

 

 対米関係の改善は、新内閣の急務であるが、対米協議の窓口になるような人物は、閣僚にはいない。ネタニヤフ首相とオバマ大統領の関係は最悪であり、同首相が外相を兼任する限り、外相ポストも対米関係の窓口にはならない。米国側の報道では、オバマ大統領は、イランとの核協議が決着する前にネタニヤフ首相と会うつもりはないようだ。国防相あるいは司法相に就任した有力政治家が対米窓口となる場合が過去にあったが、今回留任したヤアロン国防相と米国の関係も悪く、2014年10月にワシントンを訪問した際、米国政府側の要人が会談を拒否している。「ユダヤの家」のシャケッド新司法相は、イスラエルの民主主義の番人である最高裁の権限縮小を主張しており、就任前から国内で議論を巻き起こしている人物であり、オバマ政権と相性がいいとは考えられない。国際社会から歓迎・期待される政治家が閣内に見当たらないことは、第四次ネタニヤフ内閣がいかに内向きの政権であるかの証左だろう。イスラエルの国際的孤立がさらに深まることが、よりいっそう懸念される事態となっている。

(中島主席研究員 中島 勇)

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