中東かわら版

№14 イラン:イエメンへの支援船派遣と米空母のアデン湾展開

 イランがイエメンへ支援船を派遣しようとしたことを受け、それを阻止すべく4月19日から米空母「セオドア・ルーズベルト」及びミサイル巡洋艦「ノルマンディー」がアデン湾に展開していたが、4月24日、イランが支援船を引き揚げたため、両艦ともペルシャ湾に引き揚げた。

 4月21日、ウォーレン米国防総省報道官は、両艦がアデン湾及び周辺海域における海洋安全保障作戦に合流し、アデン湾の公海上にとどまっているイランの貨物船9隻を監視していることを明らかにした。同船にはフーシー派への武器が積載されている可能性があると報じられており、同報道官は、米国は治安状況の悪化に備えて選択肢を保持していくと述べていた。

 4月24日にはイランが船を引き揚げたとされたが、翌25日、サイヤリー・イラン海軍司令官は、イランの第34艦隊はアデン湾及び周辺海域における海賊対策のため展開中であると述べ、米国の発表を否定している。また、26日には、アブドゥルラヒヤーン外務次官が、イエメンへの緊急人道支援及び負傷者の輸送について、サウジ政府が阻害していると非難した。

 

評価

 連合軍による軍事作戦は、「決意の嵐」作戦を完了させ、4月22日から「希望の再生」作戦へと移行することが既に発表されているが、新たな作戦ではフーシー派への武器移転の阻止が重要になると見られる(同作戦の詳細については、「サウジアラビア:「決意の嵐」作戦の完了・「希望の再生」作戦の開始」『中東かわら版』No.12(2015年4月22日)を参照)。

4月14日に発出された国連安保理決議第2216号はフーシー派及びサーリフ元大統領派への武器禁輸を決定し、国連加盟国、特にイエメンの隣国に、同決議で禁輸が決定された物品を積載している疑いのある船舶に対する臨検の実施を認めた。これによって、サウジ側はイランのイエメンへの影響力浸透を物理的に阻止する正当性を得たことになるが、実際には米軍が表に立つことになった。これは、3月26日から開始されたサウジ主導の連合軍による空爆への参加は見送られたものの、サウジと米国がイエメン問題についてかなりの程度見解を共有していることを示していよう。

イランの貨物船に何が積載されていたのか、また、イラン側がどのような意図を持って船を派遣したのかについては、いずれも推測の域を出ず、断定的な判断を下すことはできない。イラン側は米国への直接的な批判を避け、イエメンへの人道支援を阻害するサウジを非難する姿勢を示しているが、外交的には劣勢である。

(研究員 村上 拓哉)

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