№6 イスラエル・ヨルダン:イスラエル政府がヨルダンへのガス輸出契約を承認
4月2日、イスラエル政府は、ヨルダンの死海地域にある2企業へのイスラエルからの天然ガス輸出を承認した。イスラエルがガス輸出を承認したのは、今回初めてである。2014年2月イスラエルのタミール・天然ガスのパートナーズ(註参照)は、ヨルダンの2企業(The Arab PotashとJordan Bromine companies)と総額5億ドル(2.2億立方メートル、期間15年)のガス供給で合意していた。シャローム・エネルギー相は、今回の政府承認を「歴史的」と称賛し、今後近隣諸国との経済関係強化に期待を表明した。報道では、ガス輸出は2016年に開始予定である。
註:タミール・ガス田開発に参加している企業は、米国:ノーブル・エナジー(36%)、イスラエル:デレック・グループ子会社のデレック・ドリリング(15.625%)とアブネール石油開発(15.625%)、イスラエルの企業Isramco28.75%、Dorガス開発4%)
評価
1990年代末からイスラエル沖合の海底にある天然ガスの開発が急速に進展している。当初発見されたのは中・小ガス田だったが、その後探査が進み、タミール及びリバイアサンという2つの巨大ガス田の存在が確認された。タミール・ガス田は2013年春から生産が開始されている。今回、イスラエル政府が承認したのは、タミール・ガス田に利権を持つパートナー会社とヨルダンの民間企業間の契約。米国務省は、ノーブル・エナジー社が米国の企業であることに加えて、イスラエルが隣接するアラブ諸国にガスを売ることは中東和平問題を進める経済的要因になると考え、企業間での仲介作業を行なってきた。
イスラエルのガス輸出先としては、隣接するヨルダン、パレスチナ、エジプトが最も合理的な相手国である。しかしエネルギー売買は政治の影響を強く受ける。イスラエルは、エジプトから天然ガスを輸入したが、2011年の政変後、シナイ半島のガス・パイプライン爆破が頻発し、エジプトは2012年にイスラエルへのガス輸出契約を破棄した。そのためイスラエルは、原油輸入を増大させたり、既存のガス田の生産量を無理に増産させたりするなどの対応に追われた。タミール・ガス田から近隣諸国へのガス輸出が開始されれば、まだ生産を開始していないイスラエル最大のガス田リバイアサンのガス輸出につながるかもしれず今後の動向が注目される。
(中島主席研究員 中島 勇)
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