イベント情報

7.31 第2回読書会

  • その他の行事
  • 公開日:2015/08/04

日時:平成27年7月31日(金)

場所:中東調査会

時間:18時~20時

文献

Morten Valbjorn and Andre Bank, “The New Arab Cold War: Rediscovering the Arab Dimension of Middle East Regional Politics,” Review of International Studies 38, no. 1 (January 2012): 3-24.

Curtis Ryan, “The New Arab Cold War and the Struggle for Syria,” Middle East Report 42, no. 262 (Spring 2012).

Gregory Gause III, "Beyond Sectarianism: The New Middle East Cold War," The Brookings Doha Center (2014).

 

出席者:今井宏平(日本学術振興会特別研究員)、溝渕正季(名古屋商科大学専任講師)、近藤重人(慶應義塾大学博士後期課程)、高橋雅英(外務省専門分析員)、中東調査会:村上

 

概要

1.文献の内容

1-1. Valbjorn and Bank, “The New Arab Cold War : Rediscovering the Arab Dimension of Middle East Regional Politics”

  • 「新しいアラブの冷戦」において見逃されている「アラブ」の重要性を指摘。
    しかし、50-60年代の「古い」アラブの冷戦におけるアラブ民族主義とは、異なる。
  • 2006年のレバノン戦争: 穏健な改革派vs暴力的な過激派? スンナ派vsシーア派?
     ⇒ ヒズブッラーのナスルッラーは「穏健な」「スンナ派」諸国民からも新たな「アラブ」の指導者として支持
  • 過去の「アラブの冷戦」との違い: 世俗的なアラブ主義 ⇒ イスラームもアイデンティティーの一部に
  • 革命派:世俗的な地域大国の指導者(ナセル) ⇒ イスラーム社会運動の指導者(ナスルッラー)
     *アラブ・イスラーム的公共空間から、社会的・政治的アラブ主義が生まれた

 

1-2. C. Ryan, “The New Arab Cold War and the Struggle for Syria”

  • 過去の「アラブの冷戦」と現在の「アラブの冷戦」の違い
    50-60年代: 革命的な共和制国家 vs 保守的な君主制国家
     現 代  : 社会(新たな社会的・イスラーム的・政治的アラブ主義) vs 保守的な君主制国家
  • 主要な戦場であるシリアでの状況
    国内       アサド政権    vs  国民(多くはシリア国民評議会とも自由シリア軍とも無関係)
    地域  イラン、ヒズブッラー vs  GCC、トルコ
    国際     ロシア、中国    vs  米英仏

 

1-3. Gause, "Beyond Sectarianism: The New Middle East Cold War"

  • 「新たな中東の冷戦」:サウジとイランによる影響圏を巡る争い → 国内政治・非国家主体への干渉
  • アラブ世界を超え、イラン、トルコが大きな役割を担うように
  • イデオロギー性が下がり、アイデンティティーに基づく分断が増した
  • スンナ派・シーア派の宗派対立というよりも、勢力均衡
     ⇒ スンナ派内でもサウジアラビア、ムスリム同胞団、サラーフィー・ジハード主義者間で冷戦
  • 国家の弱体化が、新たな中東の冷戦の戦場を生み出している
    ⇒ トップダウンというより、ボトムアップ。国内基盤が弱い国家の数が地域の冷戦の深刻さを決定する

 

2.議論

会合では、概ね以下のとおりのことが議論された。

  • 三論文とも現在のアラブ、中東における対立構造を冷戦というキーワードを用いて説明をしている。穏健派vs過激派、スンナ派vsシーア派の宗派対立といった単純な見方を排し、アラブという要素の重要性や国家と社会の対立関係の存在が指摘されている。
  • 他方、米・ソの対立を連想させる冷戦という用語を中東の対立構造に適用することが適切なのかという疑問はある。Gauseが論文中で言及しているように中東地域は多極構造であり、米・ソ冷戦のような二極構造ではなく、その構造を支えていた核兵器という要素もない。
  • また、アラブや中東という大きな括りによって対立構造を論じることができるのか、ひいては地域的安全保障の枠組みで説明することが可能なのかという問題も議論された。Valbjorn and Bank、そしてRyanはアラブ人としての連帯意識を強調したが、現代においてそれが国民意識を超えるようなものであるかは疑問である。

 

以上

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