イベント情報

2.14 連続講演会「ペルシア湾岸地域を取り巻く国際情勢と海洋の安全保障」第1回

  • 講演会の報告
  • 公開日:2018/02/15

2018年2月14日(水)、フォーリン・プレスセンター「会見室」にて、連続講演会「ペルシア湾岸地域を取り巻く国際情勢と海洋の安全保障」第1回を開催しました。

 

講師・演題:

溝渕正季(名古屋商科大学准教授)「揺れる米国の対中東政策と胎動する「ポスト米国」の中東地域秩序:湾岸と海洋の安全保障を中心に」

小泉悠(未来工学研究所特別研究員)「中東に対するロシアの軍事的関与:その現状と今後」

村野将(岡崎研究所研究員)「中東におけるミサイル防衛の発展と米国の取り組み」

 

 

(講演会要旨)

溝渕正季「揺れる米国の対中東政策と胎動する「ポスト米国」の中東地域秩序:湾岸と海洋の安全保障を中心に」

米国は冷戦初期から中東を“vital”な地域として重要視し、敵対的勢力の「封じ込め」、石油資源の確保、イスラエルの安全保障を追求してきた。当初は中東への直接的な関与は避けようとしたものの、イラン革命や湾岸戦争などを契機として米国は中東への関与を深めていく。しかし、現実主義・不介入主義のオバマ政権期には、アジア・太平洋への「リバランシング」が図られ、オバマ政権は「アラブの春」においても軍事介入を徹底的に回避したが、これは米国の意図とパワーに対する不信感を招いた。トランプ政権の中東政策には一定の傾向は見られるものの、方向性は未だに曖昧である。当初は「イスラーム国」の打倒を最優先の政策に掲げていたものの、2017年12月に出された『国家安全保障戦略』、2018年1月に出された『国家防衛戦略』を見ると、その優先順位は相対的に低下している。オバマ政権からトランプ政権にかけて米国の意思とパワーに対する不満・不信感が深まっており、中東における米国の影響力は急激に縮小している。一方でロシアや中国の存在感が高まっており、こうしたなか、「ポスト米国」の中東地域秩序について考える時代が到来しているのではないだろうか。

 

小泉悠「中東に対するロシアの軍事的関与:その現状と今後」

高いエネルギー自給率を誇るロシアにとって、中東地域の重要性は西側諸国と大きく異なる。また、中東はロシアにとって旧ソ連圏のような勢力圏でもない。そうでありながら、2015年にロシアはシリアへの軍事介入に踏み切った。ロシアの介入については、武器市場や海軍基地の維持といった説明がなされるが、むしろ親露友好国における体制転換を防ぐという意味合いが大きいだろう。「アラブの春」において中東の権威主義体制が「西側の陰謀によって」転換させられることは、ロシアの保守勢力の間で2000年代のカラー革命の再来として受け止められた。また、チェチェンなど北カフカス系のイスラーム武装勢力がシリアに流入し、彼らがロシアの勢力圏に戻ってくることも危惧された。これに対し、ロシアは従来のような小規模拠点の維持ではなく、継続的な戦闘部隊のプレゼンスやフメイミム基地の拡張など基地の拡張・拡大といった新たな軍事関与を始めている。これは過去のロシアと比較すると、中東への軍事関与が増加していると言える。他方で、ロシアの規模・能力には限界があり、中東において正面から米国と対決することはできない。

 

村野将「中東におけるミサイル防衛の発展と米国の取り組み」

中東地域ではミサイルを用いた実戦が多く、そこからミサイル防衛について多くの教訓が得られてきた。例えば湾岸戦争では、イラクがイスラエルへのミサイル攻撃を実施した際に、独自の情報活動や市民防衛の徹底などにより、効果的な防衛が模索された。一方、米国はミサイル防衛システム「PAC-2」を実戦投入した。PAC-2による直接的な迎撃成果は限定的だったものの、市民のパニックを軽減させ、イラクの戦略目的の達成を阻止するなど、間接的な効果は認められる。また、米空軍による継続的な敵地攻撃は、ミサイル攻撃の頻度を減少させることに貢献した。2015年から始まったイエメン紛争では、イエメン反体制派からサウジのミサイル攻撃が続いているが、これに対しサウジは米国から供与されたミサイル防衛システムで迎撃を行っている。他方、外部勢力の支援により反体制派のミサイルは長射程化しており、首都や油田地帯への攻撃が可能になる状況が生じつつある。これに対し、サウジが反体制派の背後にいると疑うイランがどの程度反体制派によるミサイル攻撃を統制・許容しているかは今後の情勢の焦点となろう。

 

質疑応答では、「アラブの春」がもたらした伝統的な域内大国の没落と湾岸諸国の相対的な影響力上昇は構造的な変化と言えるのか、サウジアラビアが進める米ロのミサイル防衛システム導入は運用に問題が生じるのではないか、ロシアの東地中海進出はヨーロッパを意識したものではないか、などの質問があった。

 

(※講演内容は講師の個人的見解であり、講師の所属先の立場や見解、認識を代表するものではありません)

 

以上

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