№49 エジプト:マドブーリー新内閣の発足
2024年7月3日、シーシー大統領は、マドブーリー首相を首班とする新内閣を任命した。今回発足した内閣は、2024年4月に3期目に突入したシーシー大統領を支える役割を担う。第2次シーシー政権時(2018年)に首相となったマドブーリー首相は再任された一方、全31閣僚のうち、19人が新任となった。閣僚リストは、以下のとおりである。
表 マドブーリー内閣の閣僚リスト(※新任は太字)
首相 |
ムスタファー・マドブーリー |
2018/6~ |
人間開発・保健・人口担当副首相 |
ハーリド・アブドゥルガッファール |
前保健・人口相 |
産業・運輸担当副首相 |
カーミル・ワジール |
前運輸相 |
国防相 兼 軍需産業相 |
アブドゥルマジード・サクル |
前スエズ県知事、元憲兵隊長 |
計画・経済開発・国際協力相 |
ラーニーヤ・マシャート |
2019/12~ |
内相 |
マフムード・タウフィーク |
2018/6~ |
環境相 |
ヤースミーン・フアード |
2018/6~ |
通信・情報技術相 |
アムル・サミーフ・タラアト |
2018/6~ |
青年・スポーツ相 |
アシュラフ・スブヒー |
2018/6~ |
高等教育・科学研究相 |
ムハンマド・アイマン・アーシュール |
2022/8~ |
軍需産業担当国務相 |
ムハンマド・サラーフッディーン |
2022/8~ |
水資源・灌漑相 |
ハーニー・アーティフ・スワイラム |
2022/8~ |
電力・再生可能エネルギー相 |
マフムード・カマール・イスマト |
前公企業部門相 |
財務相 |
アフマド・クージュク |
前財政政策・制度改革担当副財務相 |
地方開発相 |
マナール・アワド |
前ディムヤート県知事 |
観光・遺跡相 |
シャリーフ・アティーヤ |
元民間航空相 |
社会連帯相 |
マーヤー・ムルシー |
前国家女性評議会会長 |
供給・国内貿易相 |
シャリーフ・ファールーク |
前国営エジプト・ポスト社長 |
外務・移民・在外エジプト人相 |
バドル・アブドゥルアーティー |
前駐EU大使、元駐ドイツ大使 |
法相 |
アドナーン・ファンガリー |
前アシュート控訴裁判所長 |
議会・法務・政治コミュニケーション相 |
マフムード・ファウジー |
元国家評議会副議長 |
ワクフ相 |
ウサーマ・アズハリー |
前宗教問題担当大統領顧問 |
民間航空相 |
サーミフ・ハフニー |
前国際民間航空機関(ICAO)常駐代表 |
住宅・公共施設・都市相 |
シャリーフ・シルビーニー |
前新行政首都庁長官 |
農業・土地開拓相 |
アラーッディーン・ファールーク・サイイド |
前エジプト農業銀行取締役会長 |
公企業部門相 |
ムハンマド・イブラーヒーム・シーミー |
前コンコード・エンジニアリング・コントラクト会社CEO |
投資・貿易相 |
ハサン・ハティーブ |
元欧州復興開発銀行(EBRD)常務取締役 |
労働相 |
ムハンマド・グブラーン・アブドゥルハリーム |
前エジプト労働組合連盟会長 |
文化相 |
アフマド・フアード・アブドゥルサラーム |
前ガララ大学アート・デザイン学部長 |
教育・技術教育相 |
ムハンマド・アフマド・アブドゥルラティーフ |
前ナルミーン・イスラマーイール学校CEO |
石油・鉱物資源相 |
カリーム・バダウィー |
前シュルンベルジェ・エジプト東地中海地域社長 |
(出所)国家情報サービス(SIS)やアフラーム紙などをもとに筆者作成。
評価
シーシー大統領が昨年12月の大統領選挙で勝利し、2030年までの長期政権を見据えて政権運営に取り組む状況下で、新内閣が発足した。今般、マドブーリー首相が続投するものの、国防相や外相といった主要閣僚は交代し、新しい顔ぶれが目立つ。特に経済・エネルギー分野では、財務相や石油・鉱物資源相、投資・貿易相に豊富な実務経験を持つ人物が登用された。クージュク財務相は2016年及び2022年にIMFとの融資協議を担当した主席交渉官であり、バダウィー石油・鉱物資源相は米企業「シュルンベルジェ」で約30年も資源開発業界に携わった。シーシー大統領は彼らの知見・経験を活用することで、優先課題である財政状況の改善や、石油・天然ガスの新規開発を実現していく考えである。エジプトを取り巻く不安定な地域情勢が続く中、まずは国内経済の立て直しがシーシー政権の安定化にとって重要な要素となるだろう。
(主任研究員 高橋 雅英)
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