中東かわら版

№131 リビア:東部勢力とロシアの接近

 11月27日、東部の軍事勢力「リビア国民軍」のハリーファ・ハフタル総司令官は、ロシアからの正式な招待によりモスクワを訪問した。ハフタル総司令官はショイグ国防相、ラブロフ外相、露国家治安評議会議長と会談し、リビアにおけるイスラーム過激派との戦いについて軍事支援を要請したと報じられた。露外務省はハフタルのモスクワ訪問後、ロシアはリビアの危機について政治的解決が促進されるよう貢献する用意があるとの声明を出し、またペスコフ露大統領府報道官は、ロシアはリビアにおける様々なグループと連絡を取っており、ハフタル総司令官はそのうちの一人であるとコメントした。ロシア側からは、リビアに何らかの軍事支援を行うと表明はされなかった。

 ハフタルは今年6月にもモスクワを訪問し、ショイグ国防相と、ロシアからの武器提供について協議したと報道されている。しかし同時に、イワン・モロトコフ駐リビア露大使は、国連による対リビア武器禁輸措置(2011年2月~)が解除されない限り、ロシアはリビアに武器を提供しないと述べ、武器提供の報道を否定した。また露『イズベスチヤ』紙は、ハフタルの特使が9月27日にモスクワを訪問し、ミハイル・ボグダノフ露副外相兼大統領特使(中東地域担当)と会い、ロシアからの武器提供を要請したと報じている。さらに、イスラエルの『DEBKA file』(11月28日付)は情報元を明らかにしてはいないが、ロシアは、シリア・ラタキアにあるフマイミーム基地に類似した基地をベンガジに建設する計画があると報じた。

評価

 カッザーフィー時代、ソ連はリビアへの最大の武器提供国であったことを踏まえると、リビアとロシアの接近は自然とも言える。また、東部勢力が国連や欧米諸国に支持された国民合意政府(GNA)と対立していることを考えると、リビアの諸勢力の中でも特に東部勢力がロシアに接近することは理解できる。「リビア国民軍」の兵器の多くはソ連製であり、武器禁輸措置の影響からメンテナンス不足に陥っていると言われている。ロシアからの軍事支援を要請することは実際的な必要性にも基づいているのだろう。また、ロシアはリビア統一の政治的プロセスを規定した「リビア政治合意」を支持する一方で、東部・代表議会がGNAを承認しない限りGNAを正統な政府と認めないという立場を取っており、この点でもロシアと東部勢力は親和性がある。

 では、ロシアはどのような意図でリビアとの接近を図っているのだろうか。現時点では、双方からの接近というよりリビア東部勢力からの接近の方が強いように見られるが、ロシアがハフタルの公式訪問を受け入れた点から考えると、ロシアは少なくとも、東部勢力との繋がりを強化したいという思惑が国連や欧米諸国よりも強いことは確かだろう。中東地域における米国の影響圏の拡大を抑え自国の影響圏を確保するために、ロシアはシリアに次いでリビアへの介入を進めているとの見方もあるが、同時に、ロシアは既にシリアに多大な資源を投入していることも事実であり、リビアにどの程度介入する意図と能力があるのか不透明である。

 一方、ロシアとリビア東部勢力の接近によって、リビアの統一プロセスが進む可能性もある。ロシアのハフタルへの影響力が大きくなり、またロシアがリビアの統一に利益を見出すならば、ハフタルへの影響力を梃子に、ロシアがGNAと東部勢力の統一対話を実現させる可能性もありうる。ロシアとリビアの接近は、ロシアの中東地域への関与という全体像、及びリビア統一プロセスにおけるロシアの利益という2つの側面から、その動向を注視する必要があろう。 

(金谷研究員)

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