中東かわら版

№90 イスラエル:米国が軍事支援に関する覚書に署名

 9月14日、米国とイスラエルは、2018年から10年間に及ぶ米国の対イスラエル軍事支援に関する覚書に調印した。調印式は、米国務省で行なわれ、ライス大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が主催し、イスラエル側は国家安全保障会議(NSC)のヤアコブ・ナガル議長、米国側は国務省の政務担当次官トーマス・シャノンが署名した。同覚書により、米国は2018年から10年間にわたり計380億ドルの軍事支援を行う。2017-2018年は31億ドル、それ以降は33億ドル/年を10年間行い、ミサイル開発予算が50億ドル加わり計380億ドルになる。現在の軍事支援(31億ドル/年)から援助額は増加するが、現在の援助で容認されているイスラエルの軍需産業に対する発注を段階的に停止し、最終的にはすべての兵器を米国企業から購入することになっている。そのためイスラエルの一部軍需産業は、すでに合理化の準備を開始している。また今後米国議会が別の対イスラエル軍事支援を決めた場合、戦争の場合を除き、議会が決めた増額分をイスラエルが返却することになっている。

 オバマ大統領は、署名後に、米国のイスラエルの安全を保障するという約束は揺るぎないとの声明を発表すると同時に、中東和平交渉を進める必要性があることに改めて言及した。イスラエル側では、カハロン財政相が米国に謝意を表明した。野党の動きでは、ヤアロン前国防相やバラク元首相らが、早期に合意していれば援助額はより大きかったと現政権を批判している。

 評価 

  合意署名の式典には、米国とイスラエルの閣僚は誰も参加しなかった。これは、現在の米国・イスラエル関係を象徴しているのかもしれない。新たな軍事支援についての協議は2015年秋頃には開始されており、イスラエル側は当初、年40億ドル程度の支援を要請した模様である。2016年3月下旬、イスラエル・ロビー団体AIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)で演説したバイデン副大統領は、イスラエルは希望するもの全てを得ないかもしれないが、必要なものはすべて得ると述べていた。6月中旬頃には、すでに両国間の協議が概ね終了していると報道されるようになっていた。その後なかなか正式な署名に至らなかったのは、ネタニヤフ首相は、オバマ大統領ではなく、次の大統領と合意することを考えているためだとも報道されていた。

 オバマ大統領は、イスラエルの安全を保障する立場を維持しつつ、イスラエル政府には、中東和平交渉を進めることを求めている。9月14日の『NYT』紙は、オバマ大統領の声明から、同大統領は11月の大統領選挙後に中東和平に関する何らかの動きをするかもしれないと分析している。ネタニヤフ首相は、当然、そうした動きを警戒しているだろう。

(中島主席研究員)

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