中東かわら版

№42 ヨルダン:総合情報部の施設に対する襲撃事件

  6月6日、朝、アンマン北部にあるバカア・パレスチナ難民キャンプ内にあるヨルダン総合情報部(GID)施設が襲撃され、5人が殺害された。報道では、同5人は警備員1人、事務職員1人、GID職員3人である。ヨルダン当局が、同日夕方までに容疑者1人を拘束したと報道されている。事件の詳細についての政府発表はない。ロイター(7日)は、逮捕されたのは22歳のパレスチナ人で、同人に宗教的な背景はないと報道している。政府報道官は、事件は単独犯による単発的な事件だとしている。今のところ犯行声明を出した組織はない。

 事件後、パレスチナ自治政府のアッバース大統領は、アブドッラー2世国王に電話をしてヨルダン人5人が死亡したことに弔意を表明した。ヨルダンのムスリム同胞団は、同施設襲撃を非難している。

 

評価

 今回の事件の詳細は不明であるが、ヨルダンでこうした事件が起きるのは珍しい。またこうした事件を発生させるであろうと思われる緊迫した問題もない。ヨルダン当局が説明したように、今回の事件は、単独犯による単発的事件かもしれない。

 ヨルダン国内の治安・秩序は、国境を接するシリア、イラクとは比較できないほど安定している。時折、両国との国境付近でヨルダン治安部隊と武装勢力間の衝突が報道されることはあるが、国内の治安・秩序を揺るがすような大きな事件は起きていない。大規模な爆弾テロ事件としては2005年にアンマン市内のホテルで連続自爆テロが発生している。同事件後、警戒体制が強化され、その後は類似の事件は発生していない。2015年11月にはアンマン近郊の治安施設内で、ヨルダン人の士官が米国人教官2名を含む5~6人を射殺した事件が起きている。アフガニスタンでは、この種の事件が多発したが、ヨルダンでは今のところ、この1件だけである。

 他方、ヨルダン国内の治安が安定しているとしても、ヨルダン空軍は、隣接するシリア・イラク国内の「イスラーム国」に対する空爆を実施している。そのため「イスラーム国」あるいはシリア・イラクの他の過激派組織が、ヨルダン国内で攻撃を実行する危険性は常にあり、国内の治安動向には注意する必要がある。

(中島主席研究員)

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