中東かわら版

№38 イスラエル:国防相にリバーマン・イスラエルベイテヌ党首が就任

  2016年5月30日、イスラエル国会は、新内閣を賛成55、反対43で承認した。極右政党イスラエルベイテヌ(イスラエル我が家)が連立に参加し、連立政権の議席は120議席中61議席から66議席に増加した。イスラエルベイテヌのリバーマン党首が国防相に就任するほか、同党議員が移民相として入閣する。また同党は、連立参加の条件としたロシア移民の年金に関する特別予算を獲得した。すでに連立与党である極右政党の「ユダヤの家」は、イスラエルベイテヌの連立参加を承認する条件として、治安閣議の運営方法を変更することをネタニヤフ首相に要求した。ネタニヤフ首相は、29日までに、同党の要求に応じて治安閣議のメンバーに軍事・治安状況を説明する担当者を置くことに同意していた。他方、与党クラヌのガバイ環境相は、27日、リバーマンの国防相就任は国を危うくすると批判して閣僚を辞任している。

 イスラエルベイテヌが政権入りした後の記者会見で、ネタニヤフ首相は、中東和平交渉に前向きの姿勢を見せ、2民族2国家構想支持を表明し、アラブ連盟が提案したアラブ和平イニシアティブは交渉を促進させる要素を含んでいると肯定的評価を表明した。30日、野党「シオニスト・ユニオン」のヘルツォグ党首は、クラヌのカハロン党首(財政相)に連立政権を離脱するよう呼びかけた。米国務省報道官は、25日の時点で、イスラエルで建国以来最も右寄りともいわれている内閣であること、閣僚の中に2民族2国家構想に反対している人物がいることを認識しているとし、新内閣の発言ではなく行動を注視するとコメントしている。

評価

  極右政党イスラエルベイテヌが入閣したことで、イスラエル建国以来、最も右寄りの内閣とも称される内閣になった。与党の議席は66議席に増え、議席数の上では、より安定した内閣になったように見える。しかし、リバーマンが国防相に就任したことへの反発は強く、連立政権がより安定したかは疑問である。リバーマンは、外相ポストを長年務めていたが、連立政権維持のための人事であり、外相としては形式的な存在だった。リバーマン外相は、アラブ諸国からは相手にされず、欧米諸国首脳からも歓迎されなかった。国防相ポストも、同じように形式的な存在になるかもしれない。

  他方、リバーマン国防相が、実務を行なう場合、イスラエル軍幹部との軋轢だけでなく、イスラエルにとっての唯一・最大の支援国である米国との関係を悪化させる危険性がある。米『NYT』紙が、23日の社説でリバーマンの国防相就任に懸念を表明したことで米国側の懸念の強さが現われているが、さらに25日には同紙のコラムニスト、トーマス・フリードマンがネタニヤフ首相を異例の厳しさで批判している。

 こうしたことを懸念してか、イスラエルベイテヌの連立参加決定後、ネタニヤフ首相は、中東和平交渉について前向きの発言を繰り返している。しかし、極右政治家リバーマンの政権入りの結果、連立政権は中東和平交渉に対してさらに後ろ向きになる可能性が強い。今のところ、ネタニヤフ首相の中東和平に対する前向き発言が、対外的なリップサービス以上であることを示唆する材料はない。

(中島主席研究員)

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