中東かわら版

№28 トルコ:ユルドゥルム新首相の選出

 与党の公正発展党(AKP)は、5月22日、アンカラ・スポーツセンターで第2回臨時党大会を開催、5月5日に辞意を表明したダウトオール首相の後任として、ビナリ・ユルドゥルムを新党首に選出した。

 ユルドゥルムは、長年にわたり運輸海事通信相を務めており、エルドアン大統領の側近の一人であると言われている。22日の臨時党大会終了後、ダウトオール首相は正式に辞任、同日エルドアン大統領は憲法に則り、新党首となったユルドゥルムを新首相に指名、組閣を命じた。

 

評価

 今回の人事は、大統領に就任後も影響力を保持していたエルドアン大統領との権力闘争に敗れたダウトオール前首相を「追放」した形となった。

 新首相に選出されたユルドゥルムは、アブドッラー・ギュル前大統領やエルドアン大統領とともにAKPを創設したメンバーの一人であり、エルドアン大統領の側近中の側近といわれる人物である。今回の党首選では、投票前から予想されていたとおり、ユルドゥルムの圧勝で、ヌマン・クルトゥルムシュ副首相とベキル・ボズダー法相の二人の候補者を大きく引き離しての当選となった。

 選出後のスピーチの中で、ユルドゥルム首相がもっとも強調したのは大統領制への移行と、クルド系反政府武装組織のクルディスタン労働者党(PKK)の徹底鎮圧であり、なかでも自分たちがなすべきもっとも重要なことは、現在のトルコ国内で起こっている混乱を終わらせるための新憲法制定と大統領制であると述べている。

 憲法改正とPKKへの強硬姿勢は、どちらもエルドアン大統領の意向であることは間違いなく、同大統領への権力の一極集中がさらに加速されるものと思われる。現在の議院内閣制から大統領制への移行を目指すエルドアンの悲願達成に向けて、またしても扱いやすい「イエスマン」が首相に就任した。

 しかしながら、トルコ国内で行われた世論調査では大統領制移行についての反対論が根強く、憲法改正に慎重な姿勢をみせていたダウトオール前首相を追いやった「エルドアン内閣」が混乱の収集が図れるかどうかは不透明である。

(研究員 金子 真夕)

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