中東かわら版

№172 トルコ:アンカラで自動車爆弾による自爆攻撃の発生

 2月17日、トルコの首都アンカラでトルコ軍兵士を乗せたバスの車列を狙ったとみられる爆弾攻撃が発生した。これにより少なくとも28名が死亡、61名が重軽傷を負った。

  今般の爆破発生時刻は、平日の18時30分過ぎという帰宅ラッシュの最中であり、現地メディアによれば、トルコ軍兵士が乗った複数のバスが赤信号で停車したところ、近くの車が爆発、炎上した。この車には爆弾が搭載されていたとみられる。

  爆破された周辺は、軍の参謀本部や大国民議会(国会)議事堂等、国の中枢機関が多数存在していること、さらに、死傷者の中には兵士だけでなく、一般の市民も含まれていたことから国内に大きな衝撃が走っている。

  この事件を受けて、エルドアン大統領は18日に予定していたアゼルバイジャン訪問をキャンセルし、ダウトオール首相も急遽17日のブリュッセル訪問を取りやめた。

  エルドアン大統領は声明において、「トルコは自分たちを守るための権利を行使する」と発言、ダウトオール首相は「トルコはテロとの戦いを絶対に後退させることはない」と述べた。また、クルトゥルムシュ副首相は、「今回の犯行については、まだ犯人像が定かではないが、この犯行の裏にあるものを出来る限り早く解明する」と述べた。

  

 

評価

 トルコ国内では自爆攻撃が相次いでいる。トルコ史上最悪の犠牲者を出した2015年10月10日の事件から半年も経たずに同じアンカラが標的にされた。国の中枢機関が林立する地域であり、10月に大規模な自爆攻撃が発生したことから警備は強化されているはずだった。それにもかかわらず、今度はトルコ軍兵士を狙った事件が発生してしまった。クルトゥルムシュ副首相も「周到に準備された攻撃だ」と述べており、警戒態勢をかいくぐっての事態に、国の威信をかけた捜査が行われるだろう。

 今回の爆破がどのような背景を持つ組織によるのかは不明瞭であるがトルコ政府の「イスラーム国」やクルドに対する政策が原因であるとする見方が大半である。捜査結果によっては、シリア北部や「イスラーム国」への強硬姿勢に繋がり、「イスラーム国」、クルドから更なる反発を買うことは必至であろう。今後もトルコ国内で今般のような事件が起こりかねず、トルコ政府の動向が注目される。

(研究員 金子 真夕)

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