中東かわら版

№102 イスラエル・パレスチナ:止まらない暴力連鎖

  イスラエルとパレスチナ間の暴力の応酬が激化している。10月13日、パレスチナ保健省は、10月1日以降、イスラエルとの衝突で死亡したパレスチナ人は30人、負傷者は400人を越えたと発表した。イスラエルの『エルサレム・ポスト』紙(13日)は、10月中にパレスチナ人がイスラエル人を攻撃する事件が26件あり、イスラエル人6人が死亡、数十人が負傷したと報道している。14日、イスラエル治安閣議は、暴徒対策としてイスラエル警察が東エルサレムで騒動の発生した地区を閉鎖できる権限を付与した。また公共輸送機関に新たな警備員300人を配置するまでの間、イスラエル軍兵士に警備させることを決定した。イスラエル側の報道では、学校、公共施設、会社、商店などから警備会社への警備依頼は2倍に増加する一方で、商店の売り上げは客の減少で低迷している。

 

 評価

 イスラエル人とパレスチナ人の死者が半月で36人に上る事態は、暴力の応酬が相当激化していることを意味する。しかし、双方の月別死者数がもっと多かったことはある。また発生している個々の事件はこれまでにあった事件と同様の形態で目新しいものはほとんどない。従来と違うのは、自暴自棄になったと思われるパレスチナ人による、突発的、「一匹狼」的な暴力行為が切れ目無く発生していることである。これはパレスチナ人の間に、制御不能の怒りや深い絶望が存在することを示している。パレスチナ側の死者のほとんどは10~20代の若者である点はこれまでと変わらないが、若いパレスチナ人女性たちも暴力連鎖の最前列に登場するようになっている。死ぬ気になって向かってくるパレスチナ人の突発的な行動を、イスラエル側が事前に阻止するのは、極めて困難である。14日、イスラエル治安閣議は、東エルサレムで問題の起きた地域を閉鎖する権限を警察に付与した。住民の外出を禁止すれば、街頭での衝突や暴力事件は起きなくなる。この手法は、イスラエル軍が占領下の西岸地区で使っている標準的な住民鎮圧手段であるが、占領者が占領地内で秩序や統制を維持できなくなったための措置であり、占領地政策の破綻を意味する。

 13日、米国のケリー国務長官は、衝突激化の背景にイスラエルの入植地政策があるとの見方を示した。同長官は、10日にネタニヤフ首相と電話会談した際、東エルサレムの聖地の「現状維持」について、イスラエル側に言葉と行動でそれを示すよう求めたと国務省は説明している。イスラエルは、テロの続発でパレスチナ側を非難しているが、パレスチナ占領を続けるイスラエルを見る国際社会の目は冷ややかである。ネタニヤフ首相が、暴力の連鎖を断ち切る政策を取らない、あるいは取れない場合、事態はさらに悪化・混迷し、新たな反占領運動「第三次インティファーダ」の勃発を招くかもしれない。

(中島主席研究員)

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