中東かわら版

№85 イラン:日本との投資協定交渉の開始

 9月4日、日本の外務省は、7日から3日間、テヘランで投資協定の締結に向けた実務レベルでの交渉を開始することを明らかにした。8月には、山際経済産業副相がイランを訪問し、ザンギャネ石油相、セイフ中央銀行総裁、ネエマトザーデ商工鉱相らと会談しており、ザンギャネ石油相は、日本による石油・天然ガス分野への投資を呼びかけていた。

 投資協定とは、相手国の投資家やその投資財産を保護したり、外資規制の透明性を高めたりするなど、投資環境を整備することで、二国間の投資を促進することを目指すものである。日本はこれまでエジプトやトルコなど27カ国と投資協定を結んできた(うち21カ国との間の協定が発効済み)。なお、イランは64カ国と投資協定を結んでいる(うち48カ国との間の協定が発効済み、2カ国との間の協定が無効化)。

 

評価

 日・イラン間の投資協定の交渉開始は、7月の核合意を踏まえた各国によるイランとの経済関係の強化の動きの一つと位置づけられよう。もっとも、各種報道ではイランの経済制裁解除を見据えた動きと報じられているが、交渉にどの程度の日数がかかるかは不明である。交渉は数次の会合に及ぶことが通例であり、例えば日本とサウジアラビアとの間の交渉は7回、オマーンとの間の交渉は4回に渡り、実質合意に至るまでに1~2年かかっている。さらに、実質合意から署名までの間に1年以上空くことも珍しくなく、サウジの場合は2006年10月に交渉が開始され、2008年5月に実質合意したものの、署名は2013年4月となった(2015年9月現在、未発効)。比較的順調に進んだモザンビークとの交渉でも、2012年8月に交渉が開始され、2013年4月に実質合意、6月に署名、2014年8月29日に協定発効となり、交渉開始から丸2年が経過している。日・イラン間の経済関係強化という観点からは、投資協定交渉の開始は歓迎すべき動きだが、イランに対する経済制裁の解除は2016年春頃と予想されており、そのときまでに投資協定が発効している可能性は極めて低いだろう。

(研究員 村上 拓哉)

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